日々、アルコール依存症の診療を行っている日本精神神経学会専門医・指導医の石飛信先生(医療法人全人会 仁恵病院 副院長)に「アルコール依存症のセルフチェック、リスクの程度に応じたアドバイスやアルコール依存症が疑われる場合の対処法について」をわかりやすく解説いただきました。
たくさんの患者さまと向き合っている専門医の先生による解説ですので、ぜひご参考にしてください。
アルコール依存症のセルフチェック(AUDIT)
アルコール依存症を含むアルコール使用障害のリスクを評価するセルフチェックに、AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング)があります。これはWHO(世界保健機関)によって開発され、世界中で広く使用されているチェックシートです1。
AUDITは10項目の質問で構成されており、それぞれ0~4点で評価されます。その合計点からアルコール問題の程度を評価し、相応しい対応をとるために活用されています2。
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AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング) |
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Q1. あなたはアルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲みますか? |
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0. 飲まない 1. 1カ月に1度以下 2. 1カ月に2~4度 3. 1週に2~3度 4. 1週に4度以上 |
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Q2. 飲酒するときには通常どのくらいの量を飲みますか? |
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1. 3~4ドリンク 2. 5~6ドリンク 3. 7~9ドリンク 4. 10ドリンク以上 |
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Q3. 1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか? |
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0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日またはほとんど毎日 |
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Q4. 過去1年間に、飲み始めると止められなかった事が、どのくらいの頻度でありましたか? |
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0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日またはほとんど毎日 |
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Q5. 過去1年間に、普通だと行えることを飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか? |
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0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日またはほとんど毎日 |
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Q6. 過去1年間に、深酒の後体調を整えるために、朝迎え酒をせねばならなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか? |
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0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日またはほとんど毎日 |
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Q7. 過去1年間に、飲酒後罪悪感や自責の念にかられたことが、どのくらいの頻度でありましたか? |
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0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日またはほとんど毎日 |
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Q8. 過去1年間に、飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか? |
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0. ない 1. 1カ月に1度未満 2. 1カ月に1度 3. 1週に1度 4. 毎日またはほとんど毎日 |
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Q9. あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけがをしたことがありますか? |
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0. ない 2. あるが、過去1年にはなし 4. 過去1年間にあり |
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Q10. 親や親戚、友人、医師、あるいは他の健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか? |
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0. ない 2. あるが、過去1年にはなし 4. 過去1年間にあり |
(文献2より作成)
AUDITの合計点により、アルコール依存症のリスク度が判定され、危険が少ない飲酒(0~7点)、アルコール依存症の危険が高い飲酒(8~14点)、アルコール依存症の疑いあり(15~40点)の3段階に分類されます2。
・0〜7点:この範囲の点数は、アルコール依存症のリスクが低く、大きな問題のない飲酒習慣と考えられます。
・8〜14点:この範囲の点数は、中等度のリスクがあることを示しています。アルコール依存症とまではいえませんが、現時点での飲酒習慣に注意が必要なレベルです。
・15〜40点:この範囲の点数は、飲酒習慣に大きな問題があると判定され、アルコール依存症の疑いが強い状態です。
アルコール依存症の検査と診断
医療機関では、医師の診察、問診を中心に診断が行われます。問診では、飲酒量や飲酒パターン、生活への影響などについて詳しく聞き取られます。
国際的に広く用いられるICD-11では、以下の項目のうち、2つ以上を満たす場合にアルコール依存症と診断されます3。
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項目 |
内容 |
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飲酒に関する条件を自分の意思で調整できない |
飲酒を始めるタイミング、飲酒の頻度や量、飲酒の継続時間、やめるタイミング、飲酒をする状況などを自分の意思で調整できない |
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生活において 飲酒の優先順位が上昇する |
健康維持や日常の活動、責任よりも飲酒が優先されるようになり、人間関係の破綻、仕事や学業への支障、健康への悪影響などが生じているにもかかわらず、飲酒が継続または悪化する |
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アルコールによる 身体の変化(耐性・離脱) |
以下のいずれかがみられる ・ アルコールへの耐性(同じ効果を得るために飲酒量が増加) ・ 離脱症状(中止や減量後に出現) ・ 離脱症状を防ぐ・軽減するための反復飲酒 |
(文献3より作成)
通常、これらの特徴は少なくとも12カ月間にわたって認められることで診断されますが、飲酒が連続的(毎日またはほぼ毎日)で3カ月以上続いている場合にも診断されることがあります。
アルコール依存症を診断する特異的な検査はありませんが、全身の状態を評価するために血液検査や腹部エコーなど画像検査を行うことがあります。また、心理検査も行われることがあります4。
医療機関でのアルコール依存症の治療法
アルコール依存症の治療は、断酒もしくは飲酒量低減だけではなく、身体的・精神的健康状態や社会的機能の改善を目標にします5。
重症のアルコール依存、明確な身体的・精神的合併症や、深刻な家族・社会的問題がある場合には、治療目標は断酒とします。依存が軽度で合併症がない場合は、飲酒量低減を目標にすることがあります。
症状に合わせて解毒治療、リハビリテーション、合併症治療などを組み合わせます5。
解毒治療
アルコール依存症の患者さんが飲酒を中断すると、離脱症状が現れる可能性があります。重症の場合は、幻覚や意識障害、振戦などがみられ、緊急の治療を要する、生命に関わる危険な状態にいたることもあります5。
解毒治療とは、身体に浸透したアルコールが抜けるまで飲酒せず、栄養と水分と睡眠を十分に摂取し、脳をはじめとする全身の臓器を休ませることです。特化した薬物療法はありません。
解毒目的の入院は3週間程度で、その後任意で入院を継続し断酒教育プログラムに移ることもあります6。
リハビリテーション
解毒治療が終わった後は、断酒を継続し、飲酒なしで生活できる状態を目指すリハビリテーションに移ります。
・認知行動療法
認知行動療法は、飲酒に対する捉え方や考え方を患者さん自身が見つめ直し、現実に沿った捉え方や考え方に修正していく精神療法です5。これにより、新しい考え方や行動のパターンを身につけ、生活の改善を目指します。
・動機付け面接法
動機付け面接法は、認知を変えるのではなく、患者さんが何を心配していて、どのような変化を望んでいるのかに焦点を当て、患者さん自身の問題を解決しようという気持ちを強化し、行動の変化につなげようとする精神療法です7。
・集団精神療法
集団精神療法は、同じ問題を抱える仲間とさまざまなテーマで話し合いをすることで、体験を共有し、互いに支え合う治療法です5。病気を否認する傾向があるため、他者を介して自分を客観化したり、飲酒の問題を整理したりして、適切な考え方や行動を目指します。
・家族療法
アルコール依存症は、患者さん自身だけでなく、そのご家族にも深刻な影響を及ぼすケースが少なくありません。家族療法は、アルコール依存症を正しく理解し、適切な対処法を学びながら、ご家族の回復も目指す治療法です5。
合併症の治療
アルコール依存症に伴う身体的・精神的合併症の治療も並行して行います。肝硬変に対してはアミノ酸製剤、胆汁排泄促進剤、利尿剤、糖尿病に対しては経口糖尿病薬やインスリンなど、各臓器の障害に応じた薬剤を使用します5。
うつ病や不安障害などの精神疾患を併発している場合は、抗うつ薬や抗不安薬による治療を行います。栄養障害や脳の機能障害がある場合は、適切な栄養管理や薬物療法、リハビリテーションを実施します。
アルコール依存症が疑われるときの相談先
「もしかしてアルコール依存症かもしれない」と感じたら、各地域に設置されている窓口に相談してみましょう。早い段階で専門機関とつながれば、ご本人だけでなく家族や周囲の人の負担も軽減されます。具体的には、次のような窓口があります。
保健所
保健所には医師・看護師・精神保健福祉士などが在籍しており、アルコールを含むこころの健康問題について幅広く対応しています8。
相談方法は、電話や相談窓口での面談に加えて、希望があれば家庭訪問も可能です。家族だけの相談にも応じてくれるため、本人が医療機関を拒んでいたとしても、まずは家族が相談するという形でも問題ありません。地域の状況に合わせた助言や、医療機関・ほかの支援機関への橋渡しもしてくれます。
精神保健福祉センター
専門的な支援を受けたい場合は、各都道府県や政令都市に設置されている精神保健福祉センターが利用できます。
センターには、精神科の診療経験が十分にある医師や精神保健福祉士、臨床心理技術者といった専門スタッフが配置されており、精神保健福祉に関する相談を受け付けています。また、センターによっては家族会の運営やデイケアなどの事業を行っています8。
このように、公的機関ではアルコール依存症に関する専門的な相談窓口が整備されています。少しでも気になることがあれば、専門家への相談を検討しましょう。早めの相談が、回復への第一歩になります。
アルコール依存症の治療ができる医療機関の探し方
ご自身やご家族にアルコール依存症の可能性を感じた場合は、精神科や心療内科への受診が一般的です。
インターネットの検索サイトで「住んでいる地域 精神科」や「住んでいる地域 アルコール依存症 病院」などのキーワードで調べてみましょう。
アルコールによる健康障害が起きている場合は、必要に応じて他の診療科を紹介してもらえることもあります。まずは近くの医療機関へ相談してみてください。
アルコール依存症の治療に関するよくある質問Q&A
アルコール依存症を自力で治すことはできますか?
アルコール依存症は脳に変化が起きている病気であり、意志が弱い、気持ちの問題、などではありません。自力での克服は、基本的には難しいといえます。特に離脱症状は危険を伴うこともあるため、まずは医療機関への受診を推奨します。
アルコール依存症の治療が完了してもお酒は飲まない方がよいですか?
原則として、断酒を続けることが推奨されます9。ただし、依存の程度が軽度な場合などは、主治医の判断により飲酒量を減らす(飲酒量低減)目標が設定されることもあります。ご自身の状態に合わせて主治医の指示に従うことが重要です。
治療中にお酒を飲んでしまったらどうすればよいですか?
まず、飲んでしまったことを隠さずに、すぐに担当医など医療機関に相談することを検討しましょう。再飲酒は回復の過程で少なからずみられるので、自分を責める必要はありません。大切なのは、そこから学び、再び断酒に戻ることです。罪悪感から治療を中断してしまうことは最も避けるべきです。
アルコール依存症の治療は保険適用ですか?
アルコール依存症の一般的な治療は、保険診療の対象です。自立支援医療制度もあるため、医療機関や市区町村の窓口で相談してみてください。なお、一部の医療機関では自由診療(保険適用外)でカウンセリングなどを提供していることがあります。その場合は全額自己負担となるため、受診前に確認すると安心です。もし、気になる症状がある場合は、早めに医療機関にご相談ください。


