糖尿病があると、血糖値の影響で目や腎臓だけでなく、足や爪にも変化が出ることがあります。
特に、爪の異常は痛みが出にくいことも多く、気づいたときには「どうやってケアしたらいいのかわからない」と困ってしまう場合も少なくありません。
ここでは、糖尿病でみられやすい爪の変化とその経過や背景、日常生活の中で取り組める工夫についてご紹介します。
糖尿病でみられる爪の変化
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、神経障害と血管障害のいずれか、あるいは両方が重なって糖尿病でよく見られる足のトラブルが起こります1。
このトラブルを糖尿病足病変といい、糖尿病でよくみられる爪の変化も含まれています。爪の伸び方、質、形や色に少しずつ変化が出ることがあります。
ここでは、糖尿病でよくみられる代表的な爪の変化について紹介します。
巻き爪
糖尿病の合併症の1つである末梢神経障害があると、足の感覚が鈍くなってしまいます1。足の痛みを感じにくくなると、サイズの合わない靴によって、爪が強く圧迫されてしまうことがあります。また、足の感覚が鈍くなると、足先の力をうまくかけることができなくなることがあります。
巻き爪は、強く爪が圧迫されて変形する場合や足趾を使わない場合に生じやすく、主に母趾(親指)にみられます2。
巻き爪にはトランペットの形のように丸く巻いてしまうタイプとホチキスの芯のように曲がってしまうタイプがあります2。
爪白癬
糖尿病があると、糖尿病のない場合に比べて足白癬(いわゆる水虫)の頻度が2.5〜2.8倍高いといわれています3。また、糖尿病の患者さんの約22〜30%程度に爪白癬がみられます3。そして、爪白癬はほとんどの場合、足白癬から広がります2。
爪白癬の大多数を占める、遠位側縁爪甲下爪真菌症は、爪の先端から付け根にかけて爪の下で角質が増殖し、爪床(爪が指と接している部分)と爪の表層が剥離している部位があります。また、爪の表層がクサビ形に白濁するときもあります。この状態から進行し、全異栄養性爪真菌症といわれる爪白癬になると、爪の表層全体が爪の下の角質が増殖するせいで明らかに肥厚し、黄色がかった色に変色します2。
つまり、糖尿病があると爪白癬を併存しやすく、それに伴う爪の変形をきたしやすいのです。
爪が厚くなる(肥厚爪)
糖尿病で爪が厚くなる要因は大きく3パターンあります。
爪の表層の下で角質が増殖して厚くなる爪白癬、爪全体の厚みが増す厚硬爪甲、そして爪の表層が重なる爪甲鉤彎症の3つです。
爪白癬は前述の通りです。
厚硬爪甲は、外傷の後などで爪の表層が一度完全にはがれて新しく生えてくる際に、爪の伸長が遅くなったために生じると考えられています2。
爪甲鉤彎症は、足の変形に伴って生じやすく、主に母趾(親指)でみられます。形状から、爪が末端に向かって伸びることができずに上方に重なったものと推測できます2。
爪の色や形の変化
糖尿病に伴って、爪白癬によって爪の白濁や黄色味を帯びる変化や、爪肥厚のような形の変化が生じることがあります。
そのほかに、爪以外の糖尿病足病変により、爪の色や形の変化が生じることもあります。
糖尿病による爪に関する症状の経過
糖尿病による爪の変化は、気づかないうちに少しずつ進んでしまう可能性があります。日頃のケアや観察の有無によって、その後の経過には差が出てきます。
適切なケアをしている場合
爪を含む、糖尿病足病変のケア(セルフケアおよび医療的な介入)を行うと、感染兆候や足や爪の変形に気づきやすくなります。早期に変化に気づくことは、重篤な合併症(潰瘍や切断)の予防に役立ちます。そして適切なセルフケアへの取り組みが、長期的なセルフケアの習慣の定着につながります。
ケアをしていない場合
巻き爪の有無を観察する習慣などのセルフケアがない場合、爪の変形によって生じた傷が、細菌感染の侵入口となり、潰瘍の発生にも関与する可能性があるとされています4。
糖尿病による爪の変化を見逃さないための3つのポイント
糖尿病による爪の変化を大きな問題へと進行させないためにも、早い段階で気づけるように日頃からチェックを行うようにしましょう。
ここでは、忙しい日常の中でも実践しやすい、爪の変化に気づくためのポイントをまとめました。
毎日、足と爪をやさしく「観察する習慣」を持つ
入浴後などのルーティンにあわせて、足の裏や爪の色・形を確認するようにしましょう。
足の隅々まで見て触って、よく観察し、見えないところは鏡を使うなどの工夫をするとよいかもしれません。特に、長時間歩いた日や運動した日は念入りに観察しましょう1。
痛みがなくても、爪の色・厚さ・形を確認する
糖尿病末梢神経障害があると、感覚障害のために足の状態の悪化に気づかない可能性があります。濁りや厚み、左右差がないかを意識しましょう。
爪の角を深く切りすぎないようにする
爪の角を深く切りすぎてしまうと、小さな傷や炎症が起こりやすくなってしまいます。この場合、炎症が起こることは爪の状態を確認するきっかけにはなりますが、爪そのものの変化が炎症に隠れて見えにくくなってしまう可能性があります。
爪の異常を予防するためのセルフケア
爪の変化を見落とさないためのチェックとあわせて、爪の異常を予防するためのセルフケアを行うと、糖尿病があっても爪をより良い状態に維持することができます。
爪はまっすぐ切り、深く切り込みすぎない
爪を切るときは、深爪にならないようにしましょう。また、爪の角も深く切り落とさないようにしましょう。巻き爪になっている場合は長めにまっすぐに切ります1。
爪と皮膚はもともと接着しており、さまざまな刺激に対するシールドになっています。このため、爪をケアする場合のポイントには、なるべく正常の状態に近い状態にすること、外的な刺激が起きた場合に爪の表層の下にある爪床を傷つけないような形にすることが挙げられます2。
足を清潔で乾燥しすぎない状態に保つ
足を洗うときは、趾間部(足の指の間)や爪周囲をブラシで洗浄し、足底も丁寧に洗って清潔を保ちましょう2。
洗った後は水気をよく拭きとります。皮膚を傷つけないよう、こすらずに押さえるようにして拭き取るようにしましょう。また、皮膚が乾燥している場合は保湿クリームを塗って保湿します。ただし、足白癬の悪化につながる可能性があるため、指の間への保湿クリームの塗布は避けましょう1。
靴下は締め付けが強くないものを選ぶ
靴下は、足白癬(いわゆる水虫)の予防や足の保護になるため履くことをおすすめします。吸湿性の良い綿素材の靴下を選びましょう1。締め付けが強いものや重ね履きは血行を妨げてしまうことがあるので避けましょう。5本指靴下もお勧めです1。
糖尿病に伴う爪にみられる症状の治療法
爪の状態に応じて、薬や爪のケア処置などを検討した方がよい場合があります。
白癬の場合は、爪白癬の治療と血流促進のケアである5つの方法を組み合わせた爪白癬フットケア療法を行うこともあります。5つの方法の具体的な内容は、重炭酸(毎月1回)、グラインダー法と爪溝掃除(毎月1回)、エフィナコナゾール塗布(毎日)、ヒルドイド塗布(毎日)、足つぼ押し(毎月1回)です5。
爪白癬フットケア療法を行った場合に、通常のフットケアを行うよりも感染面積、新生爪伸長、爪の厚さが早期に改善する傾向があったと報告されています5。
また、爪の変形が著しい場合は、セルフケアで傷を作ってしまうこともあるため、皮膚科などの専門の診療科に相談してみるのも1つの方法です。
医療機関では下記のようなケアを行っています2。
①爪甲の周囲の角質をゾンデ(金属製の細い医療器具)で除去する
爪と皮膚の境目をしっかり見きわめ、トラブルが起きていないか評価もする
②爪甲の厚みをグラインダー(爪や皮膚を削る器具)で整える
③爪を端から端まで切りきる
④ヤスリをかける
⑤爪と周囲の皮膚をしっかり保湿する
まとめ
糖尿病と併存しやすい爪の変化は、糖尿病足病変の爪以外の症状と同じく、そのままにしておくとさまざまな合併症をきたす可能性があります。
工夫次第で状態の悪化の予防につながるため、日頃から足を観察し、適切なケアをするようにしましょう。
早めの対策を行い、きれいな爪の状態を維持することで、糖尿病があってもより過ごしやすい毎日を目指していきましょう。


