勉強中や仕事中、集中力が切れたときに甘いものが欲しくなった経験はありませんか。それは脳がブドウ糖を欲しているからかもしれません。
ブドウ糖は身体や脳を動かすエネルギー源となる栄養素です。不足すると心身に影響が生じる場合がありますが、必要以上に摂りすぎてもよくありません。
この記事では、ブドウ糖が脳で果たす役割や、効率よく摂取するポイント、摂取するときの注意点などについて解説します。
ブドウ糖とは?
ブドウ糖は、米やパンなどに含まれる炭水化物が糖質として分解されたものです。
ここでは糖質はどのような種類があるのか、炭水化物がどのようにブドウ糖になり脳まで届くのか、みていきましょう。
糖質の種類
炭水化物は、タンパク質や脂質と並ぶ五大栄養素のひとつです1。
炭水化物を多く含む食品には、米、パン、麺類、いも類、とうもろこし、果物などがあります2。
炭水化物は、体内で消化・吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、体内で消化できない「食物繊維」に分けられます。
糖質の種類は、下表の通りです1。
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分類 |
主な種類 |
|---|---|
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単糖類 |
ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど |
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二糖類 |
ショ糖、麦芽糖、乳糖など |
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少糖類 |
オリゴ糖など |
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多糖類 |
でんぷん、グリコーゲンなど |
(文献1を参考に編集部作成)
これらの糖質がエネルギー源となる一方、食物繊維は糖質の吸収をゆるやかにする作用や、腸の調子を整える作用を持ちます3。
ブドウ糖が脳に届くまでのメカニズム
さまざまな糖質をエネルギー源として利用するためには、消化によって最終的にブドウ糖へと変換する過程が必要です。
食事から摂取した炭水化物や糖質は、口内で唾液により分解が始まり、胃、小腸を通る過程で、ブドウ糖、果糖、ガラクトースなどの単糖に変えられます。単糖は小腸で吸収されたあと、肝臓に運ばれます4。
単糖は肝臓に運ばれると、エネルギーとして活用可能なブドウ糖に変換されるほか、いざというときのために蓄えられる状態になります4,5。
肝臓の働き
- ・果糖やガラクトースをブドウ糖に変換する
・ブドウ糖を血液中に送る
・余ったブドウ糖をグリコーゲンとして蓄える
血液中に入ったブドウ糖は、身体の各組織に運ばれます4。
ブドウ糖は血管を通して脳にも運ばれ、取り込まれてエネルギー源として利用されます6。
グリコーゲンは、血液中のブドウ糖が不足したときにエネルギー源として使われますが、大量に蓄えることはできません。
肝臓に貯蔵できる量を超えて糖質を摂りすぎると、余ったものは脂肪として蓄えられます5。
脳におけるブドウ糖の主な役割と重要性
エネルギー産生にかかわるブドウ糖は、脳において重要な役割を担っています。
脳のエネルギー消費量は全体の20%を占める
日本人が食事で摂るエネルギーの約60%は糖質由来といわれています5。
筋肉はブドウ糖と脂質をエネルギー源としますが、脳は通常、主にブドウ糖をエネルギー源として利用します4。
脳は体重のわずか2%程度の重さしかないにもかかわらず、身体全体で使うエネルギーの約20%を消費しています。
1日に必要なブドウ糖は100gと推定されていますが、そのうち75gが脳に使われているという報告もあります7。
脳が活動するためには、ブドウ糖は必要不可欠な存在なのです。
ブドウ糖は脳内でエネルギー産生に使われるほか、神経機能を維持する重要な役割を担っています8。
記憶力の維持
脳のエネルギーが不足すると、記憶力が低下するといわれています9。
ブドウ糖は脳のエネルギーであるだけでなく、記憶や学習に関わるアセチルコリンの生成にも関わっています。
具体的には、ブドウ糖が分解される過程で、アセチルコリンの合成に必要不可欠な材料(アセチルCoA)が生成されます。また、ブドウ糖から生み出されるエネルギーにより、神経細胞同士の情報のやり取りが維持されています8,10,11。
ブドウ糖は、記憶や学習を司る物質の材料となるほか、情報伝達自体を支えており、記憶力の維持には欠かせないのです。
精神安定
ブドウ糖は、気持ちを安定させるうえでも重要な栄養素です。
舌で甘味を感じると脳の中枢神経が刺激され、「エンドルフィン」というリラックス効果のあるホルモンを分泌するといわれています。
さらにブドウ糖の摂取は、「セロトニン」の働きにも影響するとされています。セロトニンは、精神の安定にかかわる神経伝達物質です。
セロトニンは、食事から摂取した「トリプトファン」というアミノ酸を材料に、脳内で作られます。
ブドウ糖を摂取すると血糖値が上昇し、それに伴って分泌される血糖調節ホルモン(インスリン)の働きにより、トリプトファンが脳内へ取り込まれやすくなると考えられています11。
ブドウ糖が不足した場合の脳の健康への影響
血液中のブドウ糖が不足すると、肝臓に蓄えてあるグリコーゲンを分解して糖を補給します12。
それでも足りなくなると、脳や身体に不調を引き起こす可能性があります。
ここではブドウ糖の不足による影響についてみていきましょう。
判断力、集中力の低下
ブドウ糖の供給が不十分だとエネルギーが不足し、身体が疲れやすくなります9。
特に脳は、エネルギー源のほとんどがブドウ糖です。エネルギーとなるブドウ糖は、脳に蓄えることができないため、脳の活動を正常に維持するにはブドウ糖が供給され続けなくてはなりません。
そのため、脳内のブドウ糖が足りなくなると、ぼーっとしやすくなったり考えがまとまらなくなったりします4。
眠気、イライラ、頭痛
血液中のブドウ糖が足りず「低血糖」の状態になると、さまざまな体調不良が起こることがあります。
イライラする、眠くてあくびが出る、頭痛が起こるなどの症状は、低血糖時にみられる代表的な症状です。
低血糖による症状は、ジュースや飴など速やかに吸収される糖質を補給することで改善が期待されます13,14。
意識障害
低血糖が重度になると、意識がもうろうとする場合があります。
特に糖尿病でインスリン治療を受けている人の場合、意識を完全に失うケースや、命にかかわることもあります14。
健康的な人が通常の食事を摂れていれば、深刻な低血糖状態になることは稀です。一方で、過度なダイエットや糖質制限を行っている場合や、糖尿病の治療中の方は注意が必要です。
糖質(ブドウ糖)を摂取する際のポイント
エネルギーを効率よく利用するためにできる、糖質を摂取するときのポイントを紹介します。
即効性が欲しいならラムネやチョコレート、ジュースで補給する
勉強するときやテスト中など、すぐにエネルギーを補給したいときは、ブドウ糖を多く含む食品を摂取するとよいでしょう。
素早く吸収されるため、早いエネルギー補給が期待できます15。
ブドウ糖を多く含むラムネは、特に効率よくエネルギーを補給できる食品です17。
一般的に「砂糖」と呼ばれる食品の主成分は、比較的消化されやすいショ糖です11。
砂糖の入ったジュースや、ショ糖や乳糖が主成分であるチョコレートも、手軽に摂取しやすいので場面に応じて活用しましょう11,16。
持続性が欲しいなら低GI食材の活用
血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)の上がりやすさは、食品によって差があることがわかっています。
GI(Glycemic Indexの略)は食後の血糖値の上がりやすさを表しており、その数値は食品ごとに違います。食事を摂る際の目安にするとよいでしょう18。
高GIの食品を使った朝食よりも、低GIの食品を使った朝食の方が長時間にわたり脳の働きを持続できたという報告があります20。これは、低GIの食材がエネルギーを持続的に供給できることで、脳のエネルギー不足が抑えられたためと考えられます。
GIが高い食品は白米、パン、じゃがいも、うどんなどがあり、GIが低い食品には玄米やそばなどが挙げられます18,19。
朝食をしっかり摂取し、適量の間食を取り入れる
エネルギーをしっかり活用するために、朝食をしっかり食べることが大切です。
エネルギー源のブドウ糖は体内に少ししか蓄えられないため、朝起きたときの身体はエネルギー不足の状態です9。朝ごはんを食べないと、脳も身体も正常に働けません。
朝食として、玄米やライ麦パン、ヨーグルト、フルーツなどの低GI食品を摂るとよいでしょう21。低GI食品は、糖質が緩やかに吸収されるため、脳に安定してエネルギーを供給し続け、集中力を維持するのに役立ちます。
一方で、寝起きで頭が働かないときや、速やかにエネルギーをチャージしたいときは、バナナなどの吸収の早い糖質(単糖類・二糖類)を含む食品も組み合わせると効率的です。
また、昼食と夕食の時間が空く場合は、間に間食を設けるのもよいでしょう。
空腹時の食事は、血糖値を急激に上げるといわれています22。少量を小分けにして食べるのもポイントです。
ただし、糖質の摂りすぎには注意が必要です。間食には、砂糖、脂肪、塩分などが控えめなものを選びましょう。摂取カロリーを200kcal以内にとどめるのが理想的です22。
ビタミンB1も摂取し代謝をサポート
ブドウ糖からエネルギーを産生する過程には、ビタミンB1が必要です23。
ブドウ糖を摂取する際には、ビタミンB1を多く含む食品を一緒に食べるとよいでしょう。
ビタミンB1は、豚肉、玄米、豆類などに多く含まれています5。
糖質(ブドウ糖)を摂取する際の注意点
エネルギー源として身体や脳に不可欠なブドウ糖ですが、体内に増えすぎると健康に影響を及ぼす可能性があります。
ブドウ糖を摂取する際の注意点をみていきましょう。
血糖値スパイクに注意
食事の前後で血糖値が激しく上下することを、一般的に「血糖値スパイク」といいます24。
血糖値スパイクは血管を傷つけ、動脈硬化を起こす可能性があります。
血糖値は年齢とともに上がりやすくなりますが、血糖値スパイクは若い世代でも起こる可能性が指摘されているため、年齢に関係なく注意が必要です25。
食後の血糖値を急激に上げないため、次のことに気をつけましょう3,24,26。
- ・長時間の空腹を避ける
・炭水化物ばかりを食べない
・野菜、タンパク質、炭水化物の順に食べる
・時間をかけてゆっくり食べる
AGEs(終末糖化産物)の増加に注意
体内のブドウ糖が増えすぎると、ブドウ糖とタンパク質が反応する「糖化」という現象が起こります27,28。
この過程で生成するのが、AGEs(終末糖化産物)です28。
AGEsは、体内で起こる炎症に関与すると考えられています29。脳に影響が及ぶと、神経細胞の機能が低下することも30。
AGEsを増やさないためには、糖質の摂りすぎを避けることはもちろん、食後の血糖値を急激に上げないことが大切といわれています30。
肥満や生活習慣病に注意
エネルギー源として使われなかったブドウ糖は、脂肪として体内に蓄えられます1。
脂肪の蓄積や血糖値が高い状態が続くと、肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病にかかるリスクが高まります31,32,33。
生活習慣病になると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞等などの命にかかわる病気につながる可能性も34。
食生活では食事量やバランスを意識し、適度な運動を取り入れるとよいでしょう。
まとめ:ブドウ糖は脳の貴重なエネルギー源!効率よく摂取しよう
ブドウ糖は脳の主要なエネルギー源であり、記憶力や精神安定にも関係する栄養素です。
脳内のブドウ糖が不足すると、判断力・集中力の低下や眠気、頭痛などが起こることがあります。重度の低血糖では意識障害などを招く場合もあるため注意が必要です。
一方で、必要以上に摂りすぎると体内で炎症の原因となる物質を産生したり、動脈硬化や生活習慣病を引き起こしたりする可能性があります。
ビタミンB1を多く含む食品を一緒に摂るなどの工夫をしながら、適切に炭水化物や糖質を摂取し、脳の健康を守っていきましょう。



