「気分が落ち込みやすい」「寝ても疲れが取れない」といった悩みを感じていませんか。こうした不調には、セロトニンが関係しているかもしれません。
セロトニンは、心の安定や自律神経の調整など、私たちの心身の状態に深く関わる物質です。
この記事では、脳におけるセロトニンの役割や分泌メカニズムをはじめ、不足したときの影響や日常生活におけるホルモンバランスの整え方について解説します。
セロトニンとは
セロトニンとは、神経伝達物質の一種です。
体内のセロトニンの多くは腸に存在し、消化管の運動などに関わっています。また、一部は血小板などに取り込まれ、体内で利用されます1。
脳内に存在するセロトニンは全体のわずか約2%に過ぎませんが1、他の神経伝達物質の働きをコントロールする役割を担っています2。
セロトニン分泌のメカニズム
脳で使われるセロトニンは、食事から摂取したトリプトファンを材料として1、中脳にある縫線核(ほうせんかく)と呼ばれる部位で合成されます3。
合成されたセロトニンは神経の活動に伴って神経細胞から放出され、他の神経細胞に情報を伝えることで作用します。
日光を浴びることや、呼吸・歩行といった一定のリズムを伴う運動などによってセロトニン神経の活動が調整されるとされており4、生活習慣とも深く関係しています。
セロトニンの主な役割
セロトニンは、精神の安定や自律神経の切り替え、食欲や体温調節といった生命維持機能など、さまざまな働きに深く関わっています。
ここでは、セロトニンが果たしている主な役割を解説します。
精神・情緒の安定
セロトニンは、喜びや達成感などに関わるドーパミンや、恐怖や驚きなどストレス反応に関わるノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きを調整することで、心の状態を安定させる働きがあります2。
自律神経の調整
朝に目が覚めてセロトニン神経の活動が始まると、自律神経は活動モードである交感神経が優位な状態へと切り替わっていきます4。
セロトニンの働きが低下すると、自律神経の切り替えがうまくいかず、起床後なかなか調子が出ないといった朝の不調の一因になると考えられています4。
身体と脳の働きの調整
セロトニンは、食欲や体温の調節といった生命維持に欠かせない働きに関わる物質です3。
また、ドーパミンの働きを調整することで記憶力や注意力といった認知機能を支える役割も担っています3。
さらに、痛みの抑制作用も持っており、セロトニンの働きが低下すると通常よりも痛みを感じやすくなることがあります4。
セロトニンの不足・分泌量が減る原因と影響
セロトニンの分泌や働きが低下する原因として、日照量不足や運動不足4といった生活習慣に加え、更年期における女性ホルモンの分泌低下2といった身体の変化が挙げられます。
セロトニンが不足すると、気分が落ち込む、寝つきが悪くなる、欲求をコントロールしにくくなるなど、さまざまな不調に関係する可能性があります。
気分の落ち込み・イライラ・不安
セロトニンの働きが低下すると他の神経伝達物質の調整がうまくいかなくなり、気分の落ち込みやイライラ、不安といった精神的な症状があらわれることがあります2。
なかでも、ノルアドレナリンの働きが十分に調整されないと、ストレスに過剰に反応したり、感情のコントロールが難しくなったりする場合があります4。
不眠・慢性的な疲労感
セロトニンの働きが十分に発揮されないと、眠りが浅くなったり、途中で目が覚めやすくなったりするなど、睡眠の質が低下するとされています4。
起きている間も脳の活動レベルの調整がうまくいかず、集中しにくい、頭がすっきりしないといった状態につながる可能性があります4。
また、睡眠を誘導するホルモンであるメラトニンの分泌にも影響が出ると考えられます。
メラトニンは、セロトニンをもとに合成されるためです5。
このように、セロトニンの不足は睡眠や日中のコンディションに影響し、慢性的な疲労感の原因のひとつになると考えられます。
うつ病・パニック障害などの精神疾患
うつ病では、セロトニンを含む神経伝達物質の働きが低下していることが報告されています6。実際にうつ病の治療では、脳内でセロトニンが回収されるのを抑えるSSRIやSNRIといった抗うつ薬が使用されています7。
また、セロトニンの働きが低下すると感情が不安定になりやすくなり、強い不安や動悸、混乱といったパニック障害の症状があらわれたりすると考えられています4。
過剰行動
セロトニンの働きが低下するとドーパミンの調整が十分に行われなくなり、欲求を抑えにくくなることがあります3。
結果として、過食などの食行動の乱れや薬物の乱用など、欲求のコントロールが難しくなることがあります3。
セロトニンが過剰に分泌された場合のリスク・悪影響
セロトニンは心身の安定に欠かせない物質です。
しかし、脳内での作用が過剰になると、吐き気やめまい、頭痛、頻脈、発汗、発熱などの症状があらわれることがあります3。
日常生活の中で、セロトニンの作用が過剰になることは一般的ではありません。
セロトニンが過剰に分泌されるのは、脳への強い衝撃によって中脳が障害を受けた場合や薬剤の影響などが挙げられます3。
セロトニン分泌の増やし方・ホルモンバランスを整えるポイント
セロトニンの分泌や働きを整えるためには、生活習慣の見直しが重要です。
特に、日光を浴びることや一定のリズムを伴う運動は、セロトニン神経を刺激するとされています4。
いずれも日常生活に取り入れやすいため、無理のない範囲で意識してみましょう。
日光浴
目に入った光の刺激は網膜から脳の縫線核へ伝わり、セロトニン神経を活性化させる働きがあります4。そのため、日中に太陽の光を浴びることはセロトニンの分泌や働きをサポートすると考えられます。
朝の散歩や買い物のついでなど、日常生活の中で日光を浴びる習慣を取り入れてみましょう。
リズム運動
ジョギング、エクササイズ、ウォーキングなどのリズム運動は、セロトニン神経の活動を促すとされています4。
運動の時間は10分〜30分が目安で、疲れすぎない範囲で行うことが大切です4。
効果を得るためには、数週間〜数か月ほど継続することが必要と考えられており4、
自分の生活に合った運動を選ぶことがポイントです。
人とコミュニケーションをとる
幸福感が高いと感じている人ほどセロトニンの合成が活発である傾向があり、悲しみを強く感じている場合にはセロトニンの合成が少ない傾向がみられたと報告されています8。
心地よいコミュニケーションが、心身の状態を整えるきっかけになることがあります。
バランスの良い食事
セロトニンの材料となる必須アミノ酸のトリプトファンは体内で合成できないため、食事からの摂取が欠かせません1。
トリプトファンのほかにも、ビタミンB6やナイアシン、葉酸といったビタミン類もセロトニンの合成に関わっています1。
また、腸内環境を整えることで、食事から摂取したトリプトファンが体内で利用されやすくなるとされています1。
このような理由から、特定の食品だけを意識するのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事を心がけることが重要です。
セロトニンに関するよくある疑問
セロトニンについて「他の幸せホルモンとは何が違うの?」「食べ物やサプリで増やせるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ここでは、セロトニンに関するよくある疑問をわかりやすく解説します。
セロトニンと他の幸せホルモン(ドーパミン・オキシトシン・エンドルフィン)の違いは?
セロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれます。しかし、実際にはホルモンではなく神経伝達物質の一種です。
「幸せホルモン」として、セロトニンのほかにもドーパミン・オキシトシン・エンドルフィンといった物質名を耳にしたことがあるかもしれません。
「幸せホルモン」と紹介されることもある物質ですが、それぞれ特徴が異なります。
|
神経伝達物質 |
主な特徴 |
|---|---|
|
セロトニン |
幸福感、満足感といった心の安定をサポートする。 食欲などの欲求や睡眠の調節にも関与する。 |
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ドーパミン |
やる気や喜びに関与し、「またやりたい」と感じさせる。 報酬物質とも呼ばれる。 調整が乱れると、欲求を抑えにくくなることがある。 |
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オキシトシン |
感情的な絆を形成するのに重要で、愛情ホルモンとも呼ばれる。 ハグや手を握るなどのスキンシップや、信頼できる人との関わりによって分泌が促される。 |
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エンドルフィン |
運動やストレス、痛みに反応して分泌され、天然の鎮痛剤とも呼ばれる。 不快感を和らげ、多幸感をもたらす。 |
(文献3,9を参考に編集部作成)
セロトニンを増やす食べ物やサプリメントはある?
セロトニンの原料となるトリプトファンを多く含む食材としては、牛乳やチーズなどの乳製品、卵、大豆製品などが挙げられます10。
時間がない時には、バナナもおすすめです。トリプトファンの含有量は多いわけではありませんが、ビタミンB6などセロトニンの合成に必要な栄養素も含まれています10。
また、野菜・果物を中心とした植物性食品や、納豆やヨーグルトなどの発酵食品は、腸内細菌を増やしてセロトニンが作られやすい環境をサポートするとされています1。
ビタミンB6をはじめとするビタミンB群に加えて、亜鉛や鉄、ビタミンDなども、セロトニンの合成や伝達に関与するとされている栄養素です11。不足が気になる場合はサプリメントを補助的に利用することも選択肢のひとつです。
まとめ|日々の工夫でセロトニンの働きをサポートしましょう
セロトニンは、心と身体のバランスを整えるうえで欠かせない神経伝達物質です。
生活習慣の影響を受けやすく、働きが低下すると気分の落ち込みや不眠、慢性的な疲労感などにつながることがあります。
日光を浴びたり、リズム運動を取り入れたりするなど、できることから少しずつ生活に取り入れることが大切です。
また、特定の食品に偏るのではなく、栄養バランスの取れた食事を意識しましょう。
気分の落ち込みや不調が長く続く場合には、自己判断せず医療機関への受診を検討しましょう。
穏やかな日々を過ごすためにも、セロトニンを意識した工夫に取り組んでみましょう。



