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エンドルフィンとは|働きや分泌メカニズム・出し方や過剰分泌・中毒リスクを解説
更新日:2026-04-09

エンドルフィンとは|働きや分泌メカニズム・出し方や過剰分泌・中毒リスクを解説

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楽しそうにジョギングをしているふたり

忙しく、日々のストレスを溜めてしまいがちな毎日のなか、「ストレスを和らげて前向きになりたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。

私たちの心と体を支えるホルモンの中でも、多幸感をもたらしたりストレスを軽減させる力をもっているのが「エンドルフィン」です1。 

本記事では、「幸せホルモン」や「脳内麻薬」ともいわれるエンドルフィンの役割や分泌のメカニズム、ホルモンバランスを整えるポイントまで詳しく解説します。

エンドルフィンの働きを理解し、健やかな毎日を過ごすための参考にしてくださいね。

エンドルフィンとは

エンドルフィンは、体内で生成されるホルモンで、痛みを和らげたり、心地よい気分にさせてくれる役割を持っています1

名前の由来は「endogenous(内因性)」+「morphine(モルヒネ)」からきていて、薬ではなく「脳や体が自分で作る鎮痛剤」という意味になります。

主に脳の視床下部や下垂体で作られる神経伝達物質のひとつです。ストレスや痛みを感じたときに働いて、心身を守ってくれる役割をしています1

痛みやストレスに応じて放出されるエンドルフィンは、時にモルヒネを凌ぐ鎮痛効果を発揮し、心地よさや達成感を与えてくれます1

エンドルフィンは、β、α、γの3種類がありますが、特に研究が進んでいるのがβ-エンドルフィンです。

種類

働き

α-エンドルフィン

神経の興奮を落ち着かせる2

β-エンドルフィン

心身の痛みを和らげ、多幸感や高揚感を与える3

γ-エンドルフィン

神経の伝達を調整する2

(文献2,3を参考に編集部作成)

エンドルフィン分泌のメカニズム

エンドルフィンは脳の視床下部と下垂体などで作られます4
私たちの体がストレスや痛みを感じると、脳から「体を守れ」という指令が出され、エンドルフィンが分泌される仕組みになっています。

具体的には、脳にある視床下部がストレスを察知すると、エンドルフィンの元となるタンパク質が切断され、ストレスに立ち向かうために活動しやすい形に変化して分泌されます4

脳はストレスに対抗するホルモンを出すと同時に、エンドルフィンを強力な鎮痛剤として働かせます4

これによりパニックを抑えたり、痛みを和らげたりして、心身のバランスを保とうとするのです4

エンドルフィンの主な役割

エンドルフィンは、私たちの脳内や全身に広く作用します。
そして、一度放出されるとその効果を安定して長く持続させるという特徴をもっています4

エンドルフィンは、脳内の受容体(ホルモンや神経伝達物質を伝えるタンパク質)に結びつくことで、痛みやストレスを抑えるだけでなく、幸せな気分を作ったり、免疫力を整えたりします。

ここでは、エンドルフィンの主な役割についてみていきましょう。

鎮痛作用

エンドルフィンの最大の役割は、痛みの緩和です。エンドルフィンの鎮痛効果は、医療現場で痛み止めなどに使われるモルヒネの、約18倍〜33倍という効力を持つとされています5

身体が痛みやストレスを伴う出来事に遭遇した際に、痛みを感じる神経に対して放出され、その作用のお陰で私たちは痛みやストレスに耐えることができます4

例えば、激しい試合中のアスリートが大きな怪我をしても、その場では痛みを感じずにプレーを続行できることがあります。
これは、極限のストレス下でエンドルフィンが大量に放出され、痛みを感じる神経に強力なブレーキをかけているためです。
怪我をしているのに、「火事場の馬鹿力」のような力が発揮できる背景には、エンドルフィンによる鎮痛効果があると言われています。

多幸感・幸福感を与える

エンドルフィンは、私たちが感じる幸福感や多幸感(ランナーズハイなど)の正体でもあります。

脳内には通常、快楽物質であるドーパミンの出過ぎを抑える、「GABA(ギャバ)」というブレーキの役割を担う物質が存在します。
そこにエンドルフィンが働くと、GABAの働きが抑えられブレーキが外れた状態になり、ドーパミンがたっぷり放出されます4,5

これにより、私たちはランナーズハイのような強烈な幸福感を感じることができるのです。
運動により目標達成したときや、美味しいものを食べているときにも、脳内でエンドルフィンが働いています1,4。また、笑いや恋愛、性行為やスキンシップなどによってもエンドルフィンの分泌が活性化されることがわかっています1

ストレス軽減と心身の安定

エンドルフィンは、不安や神経の過敏状態などのストレスに深く関わっていて、全身の過剰なストレスを抑え、心身の安定を支える役割を持っています4

エンドルフィンが欠乏するとストレスに対処する力が弱くなり、なかなかストレスが抜けない状態となってしまいます4

免疫の調節と抗炎症作用

エンドルフィンは、サイトカインと連携して全身の免疫バランスを整える役割も持っています。

具体的には、体内の炎症を悪化させる炎症性サイトカインを抑え、炎症を鎮める抗炎症サイトカインとのバランスを調整することで、過剰なダメージから身体を守ります⁴。

一方で、脳内では体温の上昇を促して外敵と戦う準備を整える働きも報告されています。
エンドルフィンはサイトカインと相互に影響しながら、私たちの免疫機能をコントロールする役割を担っているのです4

エンドルフィンが不足・分泌量が減る原因と影響

エンドルフィンが不足すると、私たちの心身を保護する盾が失われたような状態になります。
単に心地よさが減るだけでなく、ストレスや痛みに対して脳が対応しきれない状態に陥ってしまいます。

ここでは、エンドルフィンが不足したときの心身への影響を紹介します。

痛みや不快感の増加

エンドルフィンが不足すると、痛みに対して無防備な状態になります。
本来エンドルフィンは脳内で痛みの信号を遮断する役割をもっていますが、それが不足することでちょっとした刺激や痛みが苦痛として脳へ伝わってしまいます4

例えば、慢性的な寝不足や過労が続いているときに、普段より体が重く感じたり、ちょっとした打ち身や肩こりをひどく痛く感じたりすることがあります。
これは、心身のストレスによりエンドルフィンの分泌が追いつかなくなり、脳が痛みを感じやすくなっているサインといえます。

また、痛みに過敏な状態が続くことで心身ともに消耗し、痛みが慢性的なものになることもあります4

気分の落ち込み・抑うつ

エンドルフィンは幸福感をもたらす物質ですが、慢性的なストレス下ではその調節機能が乱れることで分泌量が低下し、気分の落ち込みやうつ病を招く原因となります4

エンドルフィンが神経の興奮を抑える役割を果たせなくなると、脳が「過覚醒」という神経が尖りすぎた状態になります。これにより、普段なら聞き流せる音が気になったり、些細な出来事が苦痛になったり、常に精神が休まらなくなります。 そして慢性的な不安や落ち込みを引き起こします4

エンドルフィンが不足することで、外からのストレスが脳にダメージを与え、うつ症状を引き起こしやすくなるのです4

依存症リスクの上昇

私たちが幸福を感じるとき、脳内ではエンドルフィンが快感や幸福感を高めるドーパミンの放出を促します。

しかし、慢性的なストレスなどでエンドルフィンの分泌能力が低下すると、ドーパミンが出づらくなり日常の小さな出来事では満足感を得にくい状態に陥ります。

すると、脳は手っ取り早くその心の穴を埋めるために、アルコールや薬物といった強力な外的刺激を求めるようになります。

これは薬物やアルコールが、ドーパミンを強制的に放出させることで一時的に多幸感をもたらすためです。

外的刺激によるドーパミンの放出が繰り返されると、脳は自力で作る必要がないと判断し、エンドルフィンの分泌能力が低下するという負のスパイラルに陥ってしまいます4
より多くの満足感を得ようとする依存状態の背景には、エンドルフィンが関わっているのです。

エンドルフィンが過剰に分泌された場合のリスク・悪影響

エンドルフィンは強力な鎮痛・快楽作用を持ちますが、過剰な分泌や外部からの過度な刺激は、脳の調節機能を破壊し、心身に深刻な悪影響を及ぼすリスクがあります。

エンドルフィン中毒

「ランナーズハイ」に代表される過度なエンドルフィンの放出は、時に依存症を引き起こします。これは、激しい運動等による肉体的な苦痛がエンドルフィンの分泌を促し、強力な幸福感や多幸感をもたらすためです4

しかし、この快感を追い求めて過剰なトレーニングを繰り返すと、脳がその刺激に慣れてしまい、運動をしないとイライラしたり不安を感じたり、禁断症状が現れる運動依存状態になることもあります4

これは、運動だけでなく、スリルを伴うスポーツやアトラクションの体験や、美味しさに刺激を伴う激辛料理を食べることなど、エンドルフィンが分泌される「快感を伴う痛みやストレス」であれば起こり得ます。

判断力の低下と躁状態の誘発

エンドルフィンが過剰に働くと、感情のコントロールが困難になり、異常な興奮状態や判断力の欠如を招くことがあります4

動物実験においても、過剰投与によって瞳孔の拡張や過度な興奮、冷静な判断を欠いた異常行動が確認されていて、精神的な不安定さを引き起こすリスクがあることがわかっています4

睡眠障害と覚醒サイクルの乱れ

脳内でエンドルフィンが過剰に作用すると、睡眠と覚醒のバランスが崩れ、眠りの質が低下します。過剰なエンドルフィンが深い眠りを妨げ、浅い睡眠を繰り返させてしまう現象がおきるためです。

特に睡眠障害をもっている人は、この状態でエンドルフィンが作用すると、さらに不眠が長期化し、躁状態に陥ってしまいます4

エンドルフィンには、メリットだけでなく注意点もあるため上手に付き合う必要があります。

エンドルフィン分泌の増やし方・ホルモンバランスを整えるポイント

エンドルフィンは日常的な習慣を通じて分泌を促すことで、ストレス耐性の向上や気分の安定が期待できます。

ここでは、エンドルフィンを安定的に分泌させるポイントをご紹介します。

適度な有酸素運動

有酸素運動は、エンドルフィン分泌を促す最も確実な方法のひとつです。
有酸素運動は、単なる気分のリフレッシュに留まらず、脳細胞の成長や認知機能の向上など、脳そのものを強化し、脳の健康状態を向上させます。

定期的な有酸素運動を行うことで脳内の血流が増加し、エンドルフィンの分泌や「BDNF(脳由来神経栄養因子)」と呼ばれるタンパク質の産生が促されます。

日々の生活に20〜30分程度のウォーキングや軽いジョギングなどを、無理のない範囲で取り入れることは、エンドルフィンの放出によるメンタルヘルスの向上につながります8

美味しい食事や満腹感

美味しいものを食べると、脳内でエンドルフィンが放出されることが確認されています。
特に甘いものを食べたときにその反応が最も強く、美味しいと感じるほどエンドルフィンの分泌量も多くなる傾向があります。

また、エンドルフィンは美味しさへの反応だけでなく、空腹や渇きを満たすという行為そのものにも反応することがわかっており、食事による満足感全体を支えるしくみに関わっていると考えられています9

入浴やサウナによる刺激

お風呂やサウナに入ると、身体が熱による刺激を受けて内分泌系が活性化し、β-エンドルフィンの血中濃度が上昇することが報告されています10

温度とエンドルフィンの分泌に関する研究では、高温の温泉に入浴した結果、β-エンドルフィンの血中濃度が約3倍に上昇することが確認されました。

入浴やサウナ後に感じる心地よい多幸感やリラックス感は、このエンドルフィンの放出によるものと考えられます11

笑いや感動体験

人は心から笑うと快楽を感じ、脳の視床下部でエンドルフィンが分泌されます。笑うことで多幸感が高まるだけでなく、人との絆を深める役割も果たします12

また美しい音楽を聞いて感動するといった、感情が動くことも、エンドルフィンの分泌に効果的です。心地よく脳を刺激することで、日々のストレスや不安を和らげることにもつながります13

エンドルフィンに関するよくある疑問

ここでは、エンドルフィンについての質問を紹介します。疑問点を解消して、より理解を深めていきましょう。

エンドルフィンとドーパミンとの違いは?

ドーパミンも「脳内麻薬」「幸せホルモン」と呼ばれることがあるホルモンで、快感や幸福感に関わっていますが、働きに違いがあります。

エンドルフィンは痛みを抑え、深いリラックス感を与えます。 主に運動やストレスなど身体に負荷がかかった時に、脳内に放出されます4

一方、ドーパミンは意欲を作る脳の部分を元気にし、やる気を起こします。神経を活発に動かして、行動を後押しする役目もあります14

物質

主な働き

エンドルフィン

痛みの軽減、恍惚感、社会性15

ドーパミン

やる気、行動の後押し14

セロトニン

心の安定や抗うつ作用をもたらす16

オキシトシン

絆や信頼感を強める15

(文献14,15,16を参考に編集部作成)

エンドルフィンの分泌を促す食べ物やサプリメントはある?

一部の栄養素が、エンドルフィンの分泌を促すメカニズムに関わっていることが研究されています。例えばコーヒーや緑茶、チョコレートなどに含まれるカフェインには、エンドルフィンの分泌を増加させ、運動中の疲労感を軽減するなどの作用があると考えられています17

また、脂肪の摂取が脳内のエンドルフィンを活性化し、美味しさや満足感に関与しているという研究もあります18

ただし、これさえ摂ればいいということではなく、バランスの良い食生活や生活習慣を整えることが大切です。日々の食事をおいしく楽しむ心の余裕が、エンドルフィンの健やかな分泌を支えます。

まとめ:エンドルフィンは幸福感や活力の源!生活を整えて上手に付き合おう

エンドルフィンは、強いストレスや痛みを感じた際に脳内で分泌される物質です。痛みの緩和や多幸感をもたらし、心身の安定を支える重要な働きをしています。

適度な運動や食事、入浴といった日常の習慣で分泌を促せますが、過剰な分泌は判断力の低下や依存を招くリスクもあります。

日々の生活を整え、エンドルフィンのバランスを安定させることで、心と身体の健やかさを長く保つように心がけましょう。

参考文献

1, Shazia R. Chaudhry, et al:Biochemistry, Endorphin. National Library of Medicine. [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470306/](最終閲覧⽇:2026年1⽉30日

2, DIRK H. G. VERSTEEG, et al:Effects of α-endorphin, β-endorphin and (des-tyr1)-γ-endorphin on α-MPT-induced catecholamine disappearance in discrete regions of the rat brain. Brain Res. 1979;179(1):85-92.
3, 河合克尚:身体活動の効果と心身健康科学.心身健康科学.2022;18(2):92-95.
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5, H H Loh, et al:beta-endorphin is a potent analgesic agent. Proc Natl Acad Sci U S A. 1976;73(8):2895–2898.
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8, Md Najmul Hossain, et al:The impact of exercise on depression: how moving makes your brain and body feel better. Phys Act Nutr. 2024;28(2):43–51.
9, T Yamamoto, et al:Effects of taste stimulation on beta-endorphin levels in rat cerebrospinal fluid and plasma. Physiol Behav. 2000;69(3):345-50.
10, K Kukkonen-Harjula, et al:How the sauna affects the endocrine system. Ann Clin Res
. 1988;20(4):262-6.
11, K Kubota, et al:A transient rise in plasma beta-endorphin after a traditional 47 degrees C hot-spring bath in Kusatsu-spa, Japan. Life Sci. 1992;51(24):1877-80.
12, Sandra Manninen, et al:Social Laughter Triggers Endogenous Opioid Release in Humans. JNeurosci. 2017;37 (25) 6125-613.
13, Adiel Mallik, et al:Anhedonia to music and mu-opioids: Evidence from the administration of naltrexone. Sci Rep. 2017:7:41952.
14, Daisuke Tsuboi, et al:Dopamine drives neuronal excitability via KCNQ channel phosphorylation for reward behavior. Cell Rep. 2022;40(10):111309.
15, Eiluned Pearce, et al:Variation in the β-endorphin, oxytocin, and dopamine receptor genes is associated with different dimensions of human sociality. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114(20):5300–5305.
16, M Kondo, et al:A novel 5HT3 receptor-IGF1 mechanism distinct from SSRI-induced antidepressant effects. Mol Psychiatry. 2018;23(4):833-842.
17, 近藤衣美:直接的にパフォーマンスを向上させるサプリメントの科学的根拠. Journal of High Performance Sport. 2020;5:93-105.
18, 松村 成暢:動物の高脂肪食品への執着にいたる機序の解明. KAKEN. [https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-22780119/227801192010jisseki/(最終閲覧⽇:2026年1⽉30日)

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