脳性麻痺とは?
脳性麻痺は、妊娠から生後4週間までに起こった脳の障害によって、動きや姿勢に異常が続く状態です。症状は2歳頃までにあらわれ、成長にともなって変化することがあります。病気が進行するタイプや、一時的に動きにくくなるだけのもの、成長とともに自然に改善するような発達の遅れは脳性麻痺には含まれません1。
脳性麻痺|原因とメカニズム
脳性麻痺を引き起こす原因はさまざまです。妊娠中・分娩時・生まれた直後に起こる脳への障害が関係しています。
妊娠36週未満で生まれた子(早産)や、2,500g未満で生まれた子(低出生体重児)は、脳性麻痺の発生率が高く、体重が軽いほどそのリスクが上昇します1。また、へその緒のねじれや圧迫、胎盤の早期剥離などにより胎児への血流や酸素供給が不足すると、脳が損傷を受けて脳性麻痺を引き起こす場合があります2。
胎盤の早期剥離の背景には、妊娠高血圧症候群などの体質的な要因のほか、飲酒や喫煙などがリスク因子として関係することがわかっています3。ほかにも双子妊娠での胎盤の血流の偏りや、妊娠高血圧などによる胎盤機能の低下も、胎児に十分な酸素が届きにくくなる要因4となり、脳性麻痺のリスクを高める要素の一つです。
細菌やウイルスの感染によって脳が損傷を受ける場合もあります。
GBS(B群溶血性連鎖球菌)感染症を発症すると、脳性麻痺のリスクが高いと言われています4。子宮内や産道で胎児に感染する場合(垂直感染)と、出産後に家族などの手指を介して感染する場合(水平感染)があります5。
また、ヘルペス脳炎4を引き起こすヘルペスウイルスは、産道で感染することが多いとされています。妊娠中に母親の性器ヘルペスが再発した場合、生まれてくる子への感染リスクは1〜2%ですが、初感染の場合25〜50%、特に出産間近の初感染の場合は50〜80%で感染するとされています6。
脳性麻痺を引き起こす原因は、これら以外にも、脳室周囲白質軟化症、脳室内出血、脳出血などが挙げられます。また、生まれた後に起こる痙攣(けいれん)や、高ビリルビン血症(核黄疸)も原因のひとつです1。
脳性麻痺|割合と人数
日本での脳性麻痺の割合は、約1,000人の出生あたり2人前後とされています7, 8。
また、地域によっても差がみられました。たとえば沖縄では脳性麻痺の子どもの割合がやや高く、子ども1,000人あたり2.3人と報告されています。これは医療機関への地理的なアクセスの難しさなどが関係しているとも考えられています8。
脳性麻痺|症状と分類
脳性麻痺は、脳のどの部分が損傷を受けたかによってあらわれる症状が異なります。
筋肉がこわばって動かしにくくなるタイプや、自分の意思とは関係なく身体が動いてしまうタイプ、バランスを取るのが難しいタイプなどがあります。
一般的には、痙直型(けいちょくがた)、アテトーゼ型、失調型、混合型の4つに分類されます。
脳性麻痺|痙直型の症状
身体に運動の指令を送る経路を障害されることで、筋肉の緊張が強くなったり、関節がこわばって動かしにくくなったりします。知的な発達が遅れたり、てんかんを合併したりする場合もあります。
麻痺が生じる部位によって、四肢麻痺、両麻痺、片麻痺、三肢麻痺、対麻痺、単麻痺と分類されます。
脳性麻痺|アテトーゼ型の症状
運動を調整する経路を障害されることで、体の動きや筋肉の緊張をうまくコントロールできなくなります。自分の意思とは関係なく、手足や体がゆっくりと不規則にねじれるような動きが特徴です9。
乳児期には筋肉に力が入りにくく、首がすわる、立つ、座る、歩くといった動作が難しい場合があります。症状は年齢とともに変化し、成長後も発声や発音など、話すための筋肉に影響が出ることがあります。
脳性麻痺|失調型の症状
小脳や小脳とつながっている神経が障害されることで、うまくバランスが取れなくなったり、手足を思い通りに動かせなくなったりします。
たとえば歩くとふらついて転びやすかったり、字を書くなど細かい作業をするときに手が震えたりといった症状がみられます。
脳性麻痺|混合型の症状
混合型は特定の脳性麻痺の種類に当てはまらず、2つ以上の症状が組み合わさってあらわれるものをいいます2。ある筋肉は硬く緊張している一方でほかの筋肉は力が入りにくいなど、症状が入り交じってあらわれるのが特徴です。
脳性麻痺はいつわかるの?
脳性麻痺の症状が軽く腕の麻痺がそれほど目立たない場合、生後8〜10カ月までは診断が難しいとされています。うまく座ったり立ったりできないことが、発達途上の正常なものなのか脳性麻痺によるものなのか判別がしづらいためです。
生後早い段階では、次のような特徴がみられることがあります。
- ・首がすわらない、腕で体を支えられない、身体をひねれない、バランスをとる反応が出ないなど、重力に逆らって身体を動かすことが難しい。
・手足をビクッと動かすモロー反射や、背中を指でなぞるとお尻が上がるギャラン反射など、通常は消えるはずの反応が残っている。
これらは、脳の抑制の働きがまだ弱く、運動が発達の初期段階にとどまっているサインです。保護者も気づかないうちに少しずつ症状があらわれることもあります。
脳性麻痺の検査と診断
脳性麻痺の診断は身体の動かし方や、妊娠・出産時の経過をもとに行います1。
早期診断は難しいため、月齢に合った動きができているかなどを観察して脳性麻痺の予測をする場合があります。
例えば、生後4カ月では首のすわりやモロー反射の消失、生後7カ月ではお座りや音に対する反応、生後10カ月ではつかまり立ちや人見知りなどを観察します。
MRI検査は必ずしも行われるわけではありませんが、早産や出産時のトラブルなどがあった場合にはMRIで詳しく検査する場合があります。
脳性麻痺の治療とリハビリ
脳性麻痺の治療は、主に手足の動かしにくさに対して行われます。リハビリテーション、筋肉の緊張をほぐす薬の服用や注射、整形外科・脳神経外科の手術 などがあります10。
リハビリテーションには以下のようなものがあり、理学療法士、作業療法士などにより行われます1。
・乗馬療法
姿勢を安定させ、バランスを保つ力を改善させると考えられています。
・筋力トレーニング
特に足の筋肉を鍛えると、立つ・歩くなどの大きな動きがしやすくなるという報告があります。
・有酸素トレーニング
持久力が高まり、歩く機能の改善がみられるという報告が多くあります。
そのほか、装具療法や低周波電気刺激などもあります10。近年ではロボットを用いた歩行訓練などの新しいリハビリテーションを取り入れる施設もあります。
特に痙直型では将来的な身体の変形やこわばりを防ぐためにも、早期からのリハビリテーションが推奨されます。症状に合わせて、立つ・歩くといった動作の訓練や、装具を用いた姿勢保持などを継続することが大切です。
長期間同じ姿勢で過ごすことは、関節の変形や筋肉のこわばりを悪化させる要因となるため、定期的な姿勢の変換やストレッチなどのケアを行いましょう11。
まとめ
脳性麻痺の原因はさまざまで、妊娠中・出産時の予期せぬトラブルなど、防ぐことが難しいケースもあるとされています。
妊婦健診をきちんと受けることも、細菌やウイルス感染を早期に発見・治療するために大切です。万が一トラブルが起こった場合でも、産科医療補償制度4などの支援を受けられる仕組みがあります。困ったときには一人で抱え込まず、利用できる制度・サポートを見つけることが大切です。


