脳腫瘍とは?
脳腫瘍とひと口にいっても、多くの種類があります。脳腫瘍は、脳そのものである脳実質や、脳を包む髄膜などにできる腫瘍を指します。
大きく分けると、脳から発生する原発性脳腫瘍と、ほかの臓器のがんが脳に転移して生じる転移性脳腫瘍に分類されます1。
原発性脳腫瘍は、その悪性度がグレードでⅠからⅣまでに分類されています。グレードの数字が大きくなるほど、悪性度が高くなります2。
悪性の場合は、腫瘍が急激に大きくなり、周囲の組織に染みいるように広がる浸潤(しんじゅん)傾向を示します。一方、良性の場合は、ゆっくりと増殖し、周りとの境界もはっきりしているという特徴があります1。
転移性脳腫瘍は、もともとの悪性腫瘍の性質によるため悪性度の分類はありません。転移性脳腫瘍は他のがんが脳に転移(遠隔転移)した状態であるため、原発巣(元々のがん)はステージⅣと診断されます3。さらに転移性脳腫瘍は、周囲の脳組織との境界が比較的はっきりしている傾向があるため、手術の際は肉眼的に見える境界で腫瘍を切除します4。
脳腫瘍による症状はできる場所によって異なり、頭痛や吐き気、手足のしびれ、けいれん、言葉の障害などがみられることがあります1。
脳腫瘍のさまざまな種類と特徴
髄膜腫
髄膜腫は、脳を包む髄膜から発生する脳腫瘍で、多くは良性です5。ゆっくりと大きくなるため、無症状のまま経過することもあります。
しかし、腫瘍が大きくなり脳や神経を圧迫すると、手足の動かしにくさやしびれ、言葉が出にくいなどの局所的な神経症状が現れることがあります。
さらに、頭蓋内圧が高まることによる頭痛や吐き気などの症状がみられることもあります1。
神経鞘腫
神経鞘腫は、神経細胞を包む鞘のような部分から発生する腫瘍です1。多くは、耳の機能を司る聴神経から生じる聴神経鞘腫です1。
また、顔面の感覚やそしゃくなどを司る三叉神経にも生じることがあります1, 6。
聴神経鞘腫の場合、難聴や耳鳴り、めまい、ふらつきなどが主な症状で、三叉神経鞘腫の場合、顔面の痛みや感覚の低下などがみられます1。
下垂体腺腫
下垂体腺腫は、下垂体という脳の中心部にある、身体に必要なホルモンの調整を担う部位にできる腫瘍です。
成長ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンなどを過剰に分泌するホルモン産生腫瘍と、ホルモンを分泌しない非機能性下垂体腺腫に分けられます1。
ホルモン産生腫瘍の場合、過剰に分泌されたホルモンの種類によって現れる症状は異なります。例えば、成長ホルモンが過剰な場合には手足の先や唇、顎、舌などが大きくなり、糖尿病や高血圧などが起こりやすくなります1。
また、下垂体は視神経の下に位置しているため、腺腫が成長すると視力低下や視野の障害がみられるケースもあります1。
神経膠腫 | 膠芽腫
脳実質を作る神経膠(しんけいこう)細胞(グリア細胞)からできる腫瘍を、神経膠腫(しんけいこうしゅ:グリオーマ)と呼びます。
神経膠腫のなかでも、特に悪性度が高いものが膠芽腫(こうがしゅ:グリオブラストーマ)です1。
膠芽腫は、脳実質へ浸潤しやすく、左右の大脳半球をつなぐ脳梁(のうりょう)を伝って、反対側の大脳にも及ぶこともあります7。
膠芽腫も、発生する場所によってさまざまな症状が現れます。
ただし、膠芽腫の進行は速いものが多いため、手足の麻痺などの症状が短期間で急激に進むこともあります1。
中枢神経原発悪性リンパ腫
脳などの中枢神経系にも、リンパ組織由来の悪性腫瘍であるリンパ腫が発生することがあります。身体のほかの部分に明らかなリンパ腫病変がない場合、中枢神経原発悪性リンパ腫と呼ばれます1。
近年増加傾向で、高齢者に発生しやすいことが知られています8。
そのほかの脳腫瘍
そのほかにも、頭蓋咽頭腫や転移性脳腫瘍などもあります1。
また、小児に多くみられるものとして、神経膠腫のほかにも、上衣腫や髄芽腫、胚細胞腫瘍、遺伝性の脳腫瘍なども挙げられます9。
脳腫瘍が疑われるときの検査内容と診断
症状などから脳腫瘍の疑いがある場合、以下のような検査を行い、診断します。
脳腫瘍の検査内容
脳腫瘍が疑われる場合、まずはMRIやCTなどの画像検査で脳の状態を確認します。
MRIは腫瘍の位置や性質を詳しく調べるのに適しており、造影剤を使用して血流の状態や腫瘍の広がりを確認します。
腫瘍の種類を確定するために、手術によって組織の一部を切り取り、顕微鏡で観察する病理診断も重要です10。
脳腫瘍の診断
CTやMRIなどの画像診断や、病理検査などの結果から、腫瘍の種類・大きさ・位置などがわかります。
さらに、腫瘍の病理検査から得られた組織の状態や遺伝子解析などの情報をもとに、詳細な診断をします10。特に、神経膠腫の場合、分子病理学的検査による遺伝子の情報も、予後の見通しや治療方針に影響を与えるようになってきています11。
脳腫瘍の種類別|治療法と予後
それでは、脳腫瘍の種類ごとの治療法と、予後についてみていきます。
治療などをしたあとに、どれくらいの期間の生存が期待できるのかを数値で表したものである生存割合を予後として紹介します。
髄膜腫の治療
髄膜腫の治療の基本は、手術によって腫瘍を完全に取り切ることです。術前に腫瘍に栄養を送る血管を詰める腫瘍塞栓術という血管内治療が行われることもあります。
しかし、再発が繰り返される場合や、腫瘍の部位によって合併症などが懸念される場合には、定位放射線治療を選択することもあります5。
定位放射線治療は、病気に対してさまざまな方向から集中的に放射線を照射する方法です。通常の放射線治療よりも周囲の正常な組織に対するダメージを小さくできるメリットがあります12。
髄膜腫の多くは良性であり、診断や治療を開始してから5年後に生存している人の割合(5年生存率)は約97%です。ただし、悪性度の高いものではその割合が50%程度になるものもあります13。
神経鞘腫の治療
腫瘍が大きい場合には、外科的切除や定位放射線治療が選択されます。無症状で、腫瘍が小さければMRIで腫瘍が大きくなっていないことを確認しながら経過観察することも可能です14。
神経鞘腫も多くは良性で、最も多くみられるタイプでは5年生存率は約98%とされています13。
下垂体腺腫の治療
ホルモンの過剰分泌に伴う何らかの症状が出ている場合や、腫瘍そのものが視神経を圧迫するなどで視力障害などの症状が出ている場合は、手術の適応となります。
下垂体は鼻腔の上部に近い場所にあるため、内視鏡を用いて鼻の穴から腫瘍にアプローチする、内視鏡下経鼻手術などが選択されます。
特に症状がない場合は、経過観察も可能です。
ホルモン産生型の腫瘍の場合、それぞれに応じた内服薬での治療もできます14。
下垂体腺腫も予後は良好で、タイプによって多少は異なりますが、5年生存率は100%に近いと報告されています13。
膠芽腫の治療
膠芽腫が疑われる場合、成人の場合にはまずは手術で腫瘍を取り切ることを目標とします。
そして、術後に放射線治療やテモゾロミドなどの化学療法を組み合わせます。こうした治療を行っても、膠芽腫の5年生存率は、16%程度とされています13。
しかし、近年では、遺伝子変異などによって予後が異なることも明らかになってきています。さらに、グレードの高い膠芽腫は再発率も高いですが、新しい治療法の研究も進んでいます15。
中枢神経原発悪性リンパ腫の治療
中枢神経原発悪性リンパ腫における手術の位置付けは、実際に組織を取り、本当に中枢神経原発悪性リンパ腫かどうかを調べる目的です。
ただし、年齢や病変の部位などの点から、診断的な手術が難しい場合もあります。
中枢神経原発悪性リンパ腫の場合、まず、大量メトトレキサート療法を基本とする薬物療法が行われます。
治療効果が十分に現れたら、薬物療法や、全脳照射による放射線治療、あるいはその併用による治療が行われます8。そのほか、自家幹細胞移植や再発時にはチラブルチニブによる薬物療法が行われます。
その他の腫瘍の治療
その他の腫瘍に対しても、それぞれの進行度や悪性度、年齢などを考慮し、手術や薬物療法、放射線治療などを組み合わせた治療が行われます16。
まとめ
脳腫瘍は、その種類や性質によって経過が大きく異なる病気です。
良性であっても脳のどの部位にできるかによって症状が強く出ることがあり、早期発見・早期治療が重要です。適切な診断と治療を受けることで、症状の改善や普段の生活を保てることが期待できる場合もあります。
もし、頭痛やけいれんなど、普段と違う症状が続く場合は、脳神経内科や脳神経外科などの脳の専門の診療科への受診を検討するとよいでしょう。



