睡眠のプロが辿り着いたぐっすり眠れるアロマの選び方と簡単な使い方

毎日の仕事や家事が忙しく、生活リズムが乱れて熟睡できなくなってしまったという人も多いのでは? そんなとき、入眠・安眠に効果があると言われるアロマを使ってみてはいかがでしょうか。
今回は、質の良い睡眠を取るために最適な「アロマの種類」「香りの選び方」「ブレンド方法・使い方」などについて、快眠セラピストの三橋美穂さんにお伺いしました。
睡眠の質が生活や健康に与える影響
私たちの身体と心の健康は、睡眠の質に大きく左右されます。ただ長く眠るだけでなく、深くぐっすりと眠れているかどうかが、日中の集中力や気分、さらには免疫のはたらきや代謝にも関係してきます。
実際に、慢性的な睡眠不足は、自律神経の乱れやホルモンバランスの崩れにつながり、生活習慣病やうつ病の発症リスクを高めることがわかっています。さらに、糖尿病になるリスクが1.5~2倍になることも知られています。そして、日中の眠気やイライラ、不注意によるミスなど、仕事や人間関係にも悪影響を及ぼすこともあります。
一方で、良質な睡眠は脳を休ませ、ストレスを緩和し、記憶や学習の定着を促す働きがあります。毎日をいきいきと過ごすためには、質の良い睡眠を土台とした生活リズムの安定が欠かせません。アロマの活用は、そんな“良い眠り”を習慣にするためのサポート手段の1つといえるでしょう。
アロマの香りで脳がリラックスできる仕組みとは?
――アロマは安眠効果があると言われていますが、具体的にはどのように体に作用するのでしょうか?
人が匂いを嗅いだとき、鼻の粘膜に入ってきた匂い物質が鼻にある細胞にくっつきます。すると、鼻の細胞では匂いの電気信号が生じます。この信号は、脳にあり感覚を司る中枢である嗅球(きゅうきゅう)にまず伝わり、匂いとして認識されます。
匂いは単に感覚として働くだけでなく、感情などの変化ももたらします。匂いの電気信号は、嗅球から、さらに脳の他の領域にも伝えられます。その結果、匂いによるイメージが作られ、快適あるいは不快な匂いなどといったイメージが作り出されると考えられています。
快適と感じる香りは自律神経の調整に影響を与え、交感神経から副交感神経優位に切り替わる効果も期待できます。
副交感神経が優位になることで、リラックスして安眠が期待できると言われています。
最近は香りを楽しめる芳香剤が数多くありますが、中でもアロマオイル(精油)は、植物の香り成分を抽出した天然のオイルです。アロマオイルは室温で揮発し、匂いを嗅ぐことによってその効能を得やすいという特徴があります。
また、匂いの効能を得るためには、ディフューザーで香りを楽しむほか、枕などの寝具に数滴垂らす、お風呂に入れて使うなど、汎用性が高いという点からもおすすめです。
ただ、「良い香りを嗅げばそれだけで安眠できる」というわけではなく、アロマはあくまで二次的な要素です。質の良い睡眠のためにさらに重要なのは、食事や睡眠などの規則正しい生活習慣や日光浴です。あくまで入眠儀式の一つとして捉えるといいでしょう。
良い睡眠を得るために最適なアロマの選び方とコツ
――33アロマにはさまざまな種類がありますが、安眠したいときにおすすめのアロマはどんなものでしょうか?
アロマは大きく分けて2種類あります。寝る前におすすめの「リラックス系」と、朝起きた時や日中におすすめの「リフレッシュ系」です。
睡眠前に使うのであれば、リラックス系のアロマを選ぶといいでしょう。代表的なものは、ラベンダーやカモミール、スイートオレンジ、ヒノキ、サンダルウッド、ゼラニウムです。
種類 | 主成分 | 香りの特徴 |
ラベンダー | リナロール、酢酸リナリル | 心を落ち着かせる、フレッシュフローラルな香り |
カモミール | フラボノイド、クマリン、テルペンなど | 青りんごのような香り |
スイートオレンジ | モノテルペン(特にd-リモネン)、リナロール | 爽やかで楽しく魅力的な香り |
ヒノキ | α-ピネン、β-フェランドレン、α-テルピニルアセテート、セドロール | 気分を落ち着かせてくれる香り |
サンダルウッド | α-サンタロール、β-サンタロール | 心地よい香り、ウッディな香り |
ゼラニウム | ゲラニオール、リナロール、シトロネロール | 心地よいバラの香りとミントのトップの香り |
ラベンダーに関しては、原産地がフランス南部の特定の地域に限られ、ほかの種類と交雑していない(遺伝子が入り混じっていない)「真正ラベンダー」かどうかチェックして購入するとよいでしょう。他のラベンダー種、特にラバンジン油やスパイク・ラベンダー油はカンファー含有量が6%以上と高く、より刺激的な香りの原因になってしまう一方で、真正ラベンダーはカンファーの含有量が1.2%未満と低いことが、真正ラベンダーが穏やかな香りをもたらす鍵といえるでしょう。
酢酸リナリルという成分にはより良い睡眠をもたらしてくれる効果が期待できると言われています。
また、朝気持ちよく起きられない人は、リフレッシュ系のアロマを使うのがいいでしょう。ペパーミントやレモン、ローズマリー、ユーカリ、グレープフルーツなど、爽やかな香りがおすすめです。
種類 | 主成分 | 香りの特徴 |
ペパーミント | メントール、メントン、1-8-シネオール | 強い爽快感 |
レモン | リナロール、リモネン、α-ピネン、β-ミルセン、エリオジクチオール | レモンのような爽やかな柑橘系の香り |
ローズマリー | カンファー、1,8-シネオール、α-ピネン | 爽やかなハーブの香り |
ユーカリ | 1,8-シネオール(ユーカリプトール)、α-ピネン | 心地よくスパイシーな香り |
グレープフルーツ | リモネン、ヌートカトン | 気分をリフレッシュさせ、精神的な疲労感を和らげる |
起き抜けにアロマディフューザーをセットするのもいいですし、就寝前にティッシュやハンカチに1滴アロマオイルを垂らしてポリ袋に入れておけば、朝起きたときに袋を開けて香りを嗅ぐだけでリフレッシュできます。
――入眠時と起床時、アロマの種類を使い分けるとより効果的なんですね。ちなみに、自分に合ったアロマを選ぶコツがあれば教えてください。
アロマはその日の体調や気分によっても好みが変わるので、実際に嗅いでみて、フィーリングで選ぶのが一番いいですね。ただ、とはいえ、忙しくて店頭で試す時間が取れなかったり、オンラインで購入したい方も多いのではないでしょうか。もしネットでアロマオイルを購入する場合は、真正ラベンダーなら10mLで1,500円以上の安価すぎないものを選んでみてください。メーカーの違いだけでなく、値段によっても品質が大きく異なります。
また、アロマオイルを数種類ブレンドすることで、複数の効果が得られるだけでなく、香りに深みが出るなどの相乗効果も期待できます。例えばラベンダーの香りが苦手だという人でも、オレンジを混ぜることで比較的万人受けする香りになるので、抵抗なく使える場合もあります。最近はブレンドされた状態で販売されているものも多いので、好みのアロマオイルを探してみるのもいいですね。
簡単にアロマを暮らしに取り入れる方法と注意すること

簡単にアロマを暮らしに取り入れる方法と注意すること
――置き型のアロマポットやアロマスプレー、アロマディフューザーなど道具や使い方はさまざまだと思います。シーンに応じた適切な使い方はありますか?
睡眠前に限った場合、一番手軽なのはティッシュやコットンにアロマオイルを1滴含ませて、パジャマの胸ポケットに入れておく方法です。寝返りを打つたびにほのかに香ってリラックスできますし、特別な道具も必要ない上、お手入れなども不要という手軽さが魅力です。パジャマにポケットがない場合は、アロマオイルを垂らしたティッシュやコットンを枕の下や枕元に置いておくだけでもいいでしょう。手軽さの面では、枕元にアロマスプレーを吹きかける方法もいいかもしれませんね。
部屋全体に香りを拡散させたいのであれば、アロマディフューザーを使うのがいいですね。特に水蒸気で拡散させるタイプのものであれば、部屋の加湿もしてくれるので、乾燥する秋冬の季節にぴったり。使用量の目安は、6〜8畳の部屋に対してアロマオイル4〜5滴です。
火の後始末を忘れなければ、アロマキャンドルもおすすめです。キャンドルの炎のゆらぎで視覚もリラックスできますので、香りとともに安眠をもたらしてくれると思います。
入浴時にアロマを使うという方法もあります。ただし入浴中に使うときは、粗塩や日本酒大さじ1にアロマオイルを3〜5滴混ぜ合わせてから湯船に入れてください。アロマオイルだけを入れてしまうと、お湯と分離してオイルが浮いてしまいます。また、肌に直接オイルが付着して肌荒れの原因にもなり得るので、使い方には注意してください。
――なるほど、肌荒れの原因になることがあるのですね。そのほかアロマを使う上での注意点はありますか?
入浴時もそうですが、基本的に原液をそのまま皮膚に塗るのは、肌への刺激が強すぎるため厳禁です。肌へ使用する場合は、必ずキャリアオイルなどで薄めて使用しましょう。妊娠中の方や小さなお子さん、既往歴がある方、ぺットを飼っている方も使用を控えてください。また、火気にも注意が必要です。使用する際は必ず商品の説明書を見て、指示に従って使いましょう。
――アロマオイルに消費期限はあるのでしょうか?
アロマオイルにも消費期限の目安はあります。アロマオイルの多くは、適切な保存条件下(低温、暗所、低酸素環境)であれば、約2〜3年程度は安定して品質を維持できるとされています。種類によって劣化のスピードが異なるため、以下を参考にしてみてください。
代表的な精油 | 使用目安(未開封・冷暗所保管) | |
柑橘系 | レモン、オレンジ、グレープフルーツなど | 約6カ月程度 |
樹木系 | ヒノキ、サンダルウッド、シダーウッドなど | 約2〜3年程度 |
その他(花・ハーブなど) | ラベンダー、ゼラニウム、ローズマリーなど | 約1年程度 |
ただし、皮膚に塗るのではなく香りを楽しむだけであれば、明らかに変な臭いがしない限りは気にしなくてもいいでしょう。
5つのアロマオイルで安眠を手に入れよう!おすすめのシーン別ブレンド方法
初心者でも簡単にできる、快眠のためのアロマブレンドのおすすめパターンを三橋美穂さんに解説していただきました。リラックス系の真正ラベンダー、ゼラニウム、オレンジスイート、リフレッシュ系のペパーミント、ユーカリの5つを組み合わせることで、さまざまな作用が期待できるそうですよ。
イライラして眠れない|頭が疲れているとき

爽やかなフローラルの香りの真正ラベンダーと、スッキリした香りのペパーミントを2:1でブレンドするのがおすすめです。清涼感のあるペパーミントは、気分転換にはぴったりですが、眠る前には刺激が強すぎることもあります。そこで、リラックス効果が期待できる真正ラベンダーとの組み合わせがおすすめです。ペパーミントのスッとした爽やかさの中に、真正ラベンダーのやわらかな安心感が広がり、自然と眠りに向かう準備が整っていきます。
クヨクヨして眠れない|不安感が強いとき
果実そのままのような香りのオレンジスイートと真正ラベンダー、ローズに似たフローラルな香りのゼラニウムの3種類をブレンドしてみましょう。気分を明るくしてくれるオレンジスイートにリラックス効果が期待できる真正ラベンダー、女性ホルモンのバランスを整えて不安を軽くしてくれる可能性があるゼラニウムがそれぞれバランスよく作用してくれます。
落ち込んだ気分を回復|幸せな気分で眠りたいとき
「真正ラベンダー」と「ゼラニウム」のブレンドがおすすめです。情緒を整えつつ、深いリラックス感を得ながら入眠できるはず。
たくさん寝たつもりでも疲れが取れないとき
清涼感があり、クリアな香りで息苦しさを解放してくれるユーカリとオレンジスイートをブレンドしてみてください。寝る前と朝の目覚め、それぞれのシーンに合わせて香りを使い分けてみるのも1つの方法です。寝る前に使うときは、オレンジスイート2:ユーカリ1の割合がおすすめです。朝使うときはユーカリ2:オレンジスイート1の割合でブレンドすると、気分を明るくして覚醒へと導く効果が期待でき、スッキリとした目覚めに切り替わるでしょう。
5つのアロマをお好みでブレンドしてOK
5つのアロマはどれも相性がいいので、紹介した以外にどんな風にブレンドしてもOK。その日の体調や好みに合わせて、いろいろな組み合わせを試してみてください。どれをブレンドしようか迷ったときは、2〜3種類のアロマオイルの蓋をまとめて持ち鼻の前で振ると、ブレンドした後の香りを簡単に再現することができます。ぜひ参考にしてみてください。
手軽に取り入れられるアロマで安眠ライフを
特別な知識が必要だというイメージのあったアロマですが、要素を押さえておけば手軽に使えることがわかりました。「アロマは難しく考えずに、フィーリングで使えばいい」という三橋さんの言葉通り、気分や体調に合わせてチョイス&ブレンドし、睡眠前の習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。
この記事の補足情報
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著者情報
- PROFILE/ プロフィール

三橋 美穂
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー ■Profile 1万人以上の眠りの悩みを解決してきた睡眠のスペシャリスト。全国での講演活動の他、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。 ■主な著書 『オトナ女子の不調と疲れに効く 眠りにいいこと100』(かんき出版) 『眠りのさじ加減 65歳からのやさしい睡眠法』(青志社) https://sleepeace.com/
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