【執筆者】朝水 裕一
「介護保険の認定調査って、具体的にどんなことを聞かれるんだろう?」「どうすればスムーズに調査が進むんだろう?」
このように、介護保険の認定調査に対して、疑問や不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、初めて認定調査を受ける方に向けて、調査の流れ、事前に準備しておきたいポイント、当日の注意点などを詳しく解説します。認定調査についての理解を深めるために、ぜひ最後までご覧ください。
介護保険の認定調査とは?
介護保険サービスを利用するためには、「要介護度」の認定を受ける必要があります。認定調査とは、要介護度を判定するために、市町村が行う訪問調査のことです1。
認定調査の際にご自宅や病院を訪問し聞き取りを行うのは、市町村の職員や委託を受けた認定調査員です2。ご本人の動作確認を通じて、心身の状態を総合的に評価します。
要介護認定の流れと認定調査の内容
ここでは、要介護認定の流れと認定調査の内容について説明します。それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
1. 要介護認定の申請
ご本人またはご家族が、市区町村の窓口で申請します。
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所(ケアマネジャーが所属する事業所)に代行してもらうことも可能です3。
2. 主治医意見書の作成
市区町村から申請者の主治医に「主治医意見書」の作成が依頼されます。
主治医意見書には、これまでの疾病や心身の状態に関する意見などが記載されます。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師による診察が必要です3。
3. 訪問調査(認定調査)
調査員が自宅や施設などに伺い、ご本人やご家族と面談します。調査時間は、約1時間程度です3。
具体的には、以下の6分野に関する内容で構成されています。評価基準は、それぞれの項目に対して「できる」「一部介助」「全介助」など、選択式で回答する方式です2。
分野 |
概要 |
---|---|
身体機能・起居動作 |
麻痺の有無や、寝返り、起き上がり、歩行など、日常生活に必要な基本動作に関する項目 |
生活機能 |
食事、排泄、入浴、着替えなど、生活に必要な動作に関する項目
|
認知機能 |
意思の伝達や記憶、自分の名前や場所の理解など、認知能力に関する項目 |
精神・行動障害 |
物を盗られたなどと被害的になる、大声を出すなどの、精神状態や問題行動に関する項目 |
社会生活への適応 |
薬の内服、金銭管理、買い物、簡単な調理など、社会生活を送る上で必要な能力に関する項目 |
過去14日間に受けた特別な医療 |
点滴、中心静脈栄養、透析、ストーマの処置など、特別な医療行為を受けたかに関する項目 |
(文献2をもとに作成)
4. 一次判定
訪問調査の結果と主治医意見書の一部の項目がコンピュータに入力され、一次判定が行われます。
一次判定では、全国一律の基準に基づき、要介護度の判定が行われます3。
5. 二次判定(介護認定審査会)
一次判定の結果と、主治医意見書、訪問調査の際に調査員が記入した特記事項をもとに、介護認定審査会で二次判定が行われます。
一次判定の結果が適切かどうかを審査し、最終的な要介護度が決定されます3。
6. 結果通知
審査結果に基づいて要介護度が認定され、市区町村から申請者に「介護保険被保険者証」とともに認定結果通知書が送付されます3。
※所要期間は通常、申請から結果通知まで約30日程度かかりますが、地域によっては、さらに日数を要する場合もあります。
認定調査に向けて事前に準備しておくこと・当日に注意すること
認定調査をスムーズに受けるためには、事前の準備と当日の対応が重要です。ここでは、調査の前に準備しておくべきことと、認定調査当日に注意することについて説明します。
認定調査の前に準備しておくこと
認定調査では、普段の状況を正確に調査員に伝えるためにも次の内容を準備しておくと良いでしょう。
質問事項に目を通す
認定調査では、調査員からさまざまな質問を受けます。どのようなことが聞かれるのか、事前に質問内容を確認しておくと、当日に落ち着いて対応できるでしょう。
そのため、普段の生活で不便に感じていることなどを整理しておくと、調査の際に伝えやすくなります。
普段の様子や困りごとをメモにまとめる
ご本人の普段の様子や、日常生活で困っていることを具体的に伝えることが重要です。そのため、事前にメモにまとめておくことをおすすめします。
具体的なエピソードを添えて記録しておくと、調査員に状況を正確に理解してもらえます。また、食事や入浴、トイレなど、「どの場面で、どのような介助が必要なのか」を詳しく書いておくことも大切です。
家族が立ち会える日を調整する
認定調査の日程を決める際は、可能な限り、ご家族が立ち会える日を選びましょう。
調査の際に、ご本人がうまく説明できない場合でも、ご家族が日常生活の様子を具体的に伝えることで、調査員はご本人の状態を正確に把握できます。
どのようにサポートしているかなど、ご家族だからこそ伝えられる情報を調査員に説明しましょう。
認定調査当日に注意すること
ここでは、認定調査の当日に注意することを説明します。
聞かれたことに正直に答える
調査員からの質問には、普段の様子をありのまま正直に答えることが重要です。調査員は、ご本人の状況を正確に把握し、適切な要介護度の判定につなげるために質問をしています。
普段できていることを「できない」と誇張したり、逆にできないことを「できる」と答えたりすると、実態とは異なる認定結果になるかもしれません。その結果、本来必要とされる介護サービスが受けられなくなる可能性があります。
困り事や普段の様子を詳しく伝える
日常生活で困っていることや、普段の様子、心配事などを、具体的に伝えましょう。
「歩行が不安定で、先週は2回転倒してしまった」「食事の準備が難しく、簡単な調理でも1時間以上かかってしまう」など、具体的なエピソードを交えて説明すると伝わりやすいです。
また、普段どのように介助を受けているかなどを伝えることで、調査員は、特記事項として情報を記録に残せます。特記事項は、介護認定審査会で要介護度を判定する際に、コンピュータによる一次判定の結果を修正する判断材料となります。
遠慮したり、過小評価したりせず、困りごとや普段の様子を詳しく伝えましょう。
認定調査結果が出た後の対応
認定調査の結果が出たら、まずは認定結果を確認しましょう。そして、ケアマネジャーと共に介護サービスを利用するためのケアプランを作成していきます。
認定結果に不服がある場合は、不服申し立てや区分変更を申請することも可能です。
認定結果(要介護度)の確認とケアプランの作成
調査の結果は、原則、申請から30日以内に通知されます。通知書には、要介護・要支援の段階が記載されていますので、「要介護度」を確認しましょう。
要介護度は、要支援1・2、要介護1〜5の7段階に分かれています。介護サービスを利用するためには、認定結果をもとに「ケアプラン」の作成が必要です。
ケアプランとは、利用者の心身の状態に合わせて、必要な介護サービスや利用頻度などが記載された計画書です。ケアプランは、本人・ご家族、ケアマネジャーが話し合い作成します。
認定調査結果に不服がある場合
要介護度の結果に不服がある場合は、「不服申し立て」や再調査の「区分変更」を行うことが可能です。「不服申立て」は結果が出るまでに数ヶ月かかることもあるため、「区分変更」をお勧めします。
区分変更は、要介護度を見直すための調査です。区分変更であれば、通常の認定調査と同じく原則30日以内に結果が通知されます4。
ただし区分変更を行っても、希望の介護度になるとは限りません。担当ケアマネジャーなどの専門家に相談してみましょう。
まとめ:介護保険の認定調査を理解し、必要な介護サービスにつなげよう
介護保険の認定調査は、必要な介護サービスを利用するための重要な手続きです。スムーズに調査を進めるためには、事前に流れを理解し、想定される質問事項を確認しておくと良いでしょう。
普段の様子や困りごとをメモにまとめておくと、当日の調査で伝えたい内容を整理しやすくなります。調査員には、普段の様子をありのままに、具体的に伝えることが大切です。
介護保険の認定調査について正しく理解し、最適な介護サービスの利用につなげましょう。
【執筆者】朝水 裕一
保有資格:介護福祉士、ケアマネジャー、認知症ケア専門士、第1種衛生管理者