「禁煙したいけれど、離脱症状が気になって踏み出せない」と不安を感じていませんか?
離脱症状は喫煙の中止または減量により現れる、さまざまな不快症状および行動機能障害の総称です1。離脱症状は禁煙開始後2〜3日がピークとなり、10〜14日ごろまで続き、3週間でほぼ消失します2,3。
離脱症状について正しい知識と対処法をこの記事で解説します。ぜひ、禁煙を行う際のヒントにしてみてください。
禁煙による離脱症状について
禁煙を行うとなぜ離脱症状が現れるのでしょうか。また、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。
離脱症状が起こる理由
禁煙時に離脱症状が現れるのは身体のニコチンへの依存が原因です4。タバコを吸うと肺からニコチンが取り込まれ、そのニコチンは脳内にあるα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に素早く結合し、脳内から大量のドーパミンが放出され、強い快感が得られます4。
ニコチンは覚醒や食欲抑制に関わるノルエピネフリン、気分の調整や食欲抑制に関わるセロトニン、覚醒や認知作業の向上に関わるアセチルコリンなどの神経伝達物質の分泌にも関わっています。
過度な喫煙を行っていると、これらの神経伝達物質の調節がニコチンによって行われるようになり、自身で分泌する能力が低下します。そのため、禁煙により体内からニコチンがなくなると、これらの神経伝達物質の分泌が低下し、さまざまな離脱症状が現れるのです4。
離脱症状の種類と期間
離脱症状にはさまざまな種類があり、症状が起こりやすい期間も異なります。また、禁煙したすべての人に同じように起こるわけでもありません3。
以下に、代表的な離脱症状の種類と頻度、症状が現れやすい期間についてまとめました。
離脱症状の種類および現れやすい期間
離脱症状の種類 |
頻度 |
症状が出やすい期間 |
---|---|---|
めまい |
10% |
禁煙後1〜2日 |
タバコを欲しがる |
70% |
禁煙後2〜3日がピーク |
睡眠障害 |
25% |
禁煙後7日以内 |
眠気 |
25% |
禁煙後7日以内 |
イライラ感 |
50% |
禁煙後1〜2週間 |
性格の変化(怒りっぽくなるなど) |
50% |
禁煙後1〜2週間 |
集中力の低下 |
60% |
禁煙後1〜2週間 |
疲れやすさ |
60% |
禁煙後1〜2週間 |
食欲の増加 |
70% |
禁煙後数週間 |
喫煙夢(あたかも現実に吸っているかのような夢) |
60% |
禁煙後2〜3カ月 |
(文献3を参考に表を作成)
禁煙による離脱症状への対処法
禁煙中に現れる離脱症状はつらいものですが、適切な対処をすれば乗り越えることができるでしょう。無理なく禁煙を続けるために、離脱症状への対処法を4つ紹介します。
別の行動で気分を変える
禁煙を開始した数日間は、タバコを吸いたい欲求が1日に何度も出てくる可能性があります2。イライラしたり気持ちが落ち着かなくなったりするかもしれませんが、その状態がずっと続くわけではありません。長くても3〜5分で収まるとされています2。
タバコを吸いたい時に喫煙以外で乗り切れるような行動をあらかじめいくつか考えておくと良いでしょう。
身体を動かしてリフレッシュする
適度な運動は禁煙による離脱症状やタバコへの渇望を軽減し5、離脱症状における睡眠障害を軽減させる可能性があることが示唆されています6。禁煙後の食欲や体重増加を抑制するのにも運動は適しているでしょう7。
身体を動かすことで気分のリフレッシュにも繋がるので、禁煙を始める際はぜひ積極的に運動を取り入れてみてください。運動の内容として、中等度の身体活動強度のもの(速歩、ジョギング、水泳など)がおすすめです8。
食生活を見直す
禁煙後1年以内に、約8割の人で平均2kgの体重増加がみられるという報告があります8。
体重が増える理由としては、離脱症状としての中枢性の食欲亢進が続くこと、ニコチンによる基礎代謝の亢進作用がなくなることが考えられます8。また、禁煙による口寂しさやイライラを防ぐため、いつも以上に食べてしまうことも原因として考えられるでしょう7。
体重の増加を抑制するために身体活動を増やすとともに食生活も改善することがおすすめです。具体的には以下のようなことを意識してみてください8。
- ・ 食べ過ぎないよう腹八分目を意識する
・ ゆっくりよく噛んで食べる
・ 脂身の多い肉類や揚げ物など高カロリーの食事を減らす
・ 野菜や果物の量を増やす
・ 飲酒量を減らす
ただし、禁煙直後は離脱症状で心身ともに不安定であり、コントロールが難しい時期です。食生活の見直しは、禁煙が安定してから取り組むのが良いでしょう8。
禁煙補助薬、禁煙外来の検討
禁煙補助薬は離脱症状を緩和し、禁煙を比較的楽なものにしてくれるサポーターです9。禁煙補助薬を利用すると、自力で禁煙する場合に比べて禁煙成功率も高まることが報告されています9。
現在日本では、ニコチンガムとニコチンパッチの2種類が使用可能です。
禁煙外来については、他の記事で解説しています。
まとめ|禁煙後の未来を想像してみましょう
禁煙による離脱症状の現れ方は個人差が大きく、さまざまな対処法があります。禁煙は決して楽な道のりではありませんが、離脱症状を恐れすぎる必要はありません。
禁煙することで得られるメリットを想像し、明るいイメージを思い描いて一歩ずつ前に進んでいきましょう。