メタボリックシンドロームは略して「メタボ」とも呼ばれます。2008年から特定健康診査(いわゆるメタボ健診)が始まったこともあり、「メタボ」が広く一般にも知られるようになりました。
メタボリックシンドロームをそのまま放置すると、将来的に深刻な病気を引き起こすリスクが高まるため、早めの対策が必要です。
本記事では、メタボリックシンドロームを改善するためにおすすめの食事や生活習慣などについて解説します。
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常が重なった状態を指します。
日本では腹囲が男性の場合は85cm以上、女性の場合は90cm以上の内臓脂肪型肥満が前提となり、血圧、血糖、血中脂質のうち2項目以上が基準値を超えるとメタボリックシンドロームと診断されます。内臓脂肪はインスリンが効きにくい原因となり(インスリン抵抗性)、高血圧や糖尿病、脂質異常症などを誘発すると考えられています1。
メタボリックシンドロームを放置するリスク
メタボリックシンドロームをそのまま放置すると、内臓脂肪の蓄積と複数の危険因子の重なりにより動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高まります2。
将来的に本格的な糖尿病へ進行したり、腎臓病や非アルコール性脂肪肝、高尿酸血症などを合併する可能性もあります。
メタボリックシンドロームを改善する食生活
メタボリックシンドロームの食事療法の基本は適切なエネルギー摂取、適切な運動によるエネルギー消費です3。ここでは、メタボリックシンドロームの食事療法のポイントを解説します。
食塩の摂取量を1日10g以下におさえる
メタボリックシンドロームを改善する食事の工夫として、まずは食塩摂取量を1日あたり10g以下におさえましょう3。
醤油や味噌、塩などを使いすぎない工夫が必要です。例えば、料理の味付けは薄味に慣らす、漬物や干物など塩分の多い食品を控える、汁物は汁を全部飲まないなどが効果的です。なお、特に中性脂肪が高い方は目標を6g/日以下とする3などの減塩が推奨されることもあります。
低GI値の食品を選ぶ
食後血糖の急上昇を抑えるために低GI食品を選ぶことも検討しましょう3。
GI値が低い食品は食後血糖値の上昇がゆるやかになり、インスリンの過剰分泌を抑え、脂肪が蓄積しにくくなります。
具体的には白米より玄米や雑穀米、食パンより全粒粉パン、精製された麺類よりも蕎麦や春雨といったように、精製度の低い穀物や食物繊維の多い食品はGI値が低めです。
血糖コントロールを良好に保つためにも、普段からGI値に配慮した食材選びや食べ方を心がけましょう。
ジュースやお菓子を減らす
砂糖を多く含む清涼飲料水や甘いお菓子の過剰摂取は、肥満や血糖値の急な上昇の原因となります。メタボリックシンドロームの改善のためには、間食や甘味飲料の習慣を見直し、ジュースやスナック菓子、スイーツ類をできるだけ控えることが重要です3。
例えば、喉が渇いたときは水や無糖のお茶を選ぶ、コーヒーや紅茶も加糖ではなく無糖や微糖にするなどの工夫が有効です。どうしても甘いものが欲しい場合は、少量をよく噛んでゆっくり食べるようにし、頻度も減らすよう意識しましょう。
日頃から甘い飲み物は控える、お菓子はご褒美に時々少量だけといった習慣をつけ、余分な糖分を減らしましょう。
緑黄色野菜を摂取する
ビタミン類やミネラル、食物繊維が豊富な緑黄色野菜を積極的に摂る3ことも大切です。野菜にはカロリーが低いものが多く、食物繊維が満腹感を促すため、野菜をしっかり食べることで食べ過ぎの防止や体重管理に役立ちます。
ニンジンやほうれん草などの緑黄色野菜は抗酸化ビタミンやカリウムも豊富で、動脈硬化予防や血圧のコントロールにもプラスです。1日の野菜摂取目標量は350g以上4とされていますが、毎食野菜のおかずを取り入れるよう心がけましょう。生野菜だけでなく、煮物や蒸し野菜、野菜スープなど調理法を工夫すると量を摂りやすくなります。
アルコールを摂取しすぎない
お酒の飲みすぎにも注意が必要です3。アルコールの過剰摂取は高血圧などの原因となり、メタボリックシンドロームを悪化させる恐れがあります。また、アルコール飲料はカロリーも高いため、過度の飲酒は内臓脂肪の蓄積につながります。
適度な飲酒量の目安としては、厚生労働省の指針では節度ある適度な飲酒として、1日あたり純アルコール約20g程度までとされています5。これはビール中瓶1本(500mL)や日本酒1合(180mL)程度に相当します。
飲酒習慣のある方は、できれば休肝日を設ける、一度にたくさん飲まないようにするなどといった工夫が大切です。適量を守り、飲み過ぎによる血圧や脂質の悪化を防ぎましょう。
メタボリックシンドロームを改善する運動習慣
運動習慣の改善もメタボリックシンドロームの解消には欠かせません3。定期的な運動により消費エネルギーを増やし、内臓脂肪を燃焼させることで、各種リスク因子の改善が期待できます。
有酸素運動と筋力トレーニングをバランスよく行い、継続することが重要です。有酸素運動についてはウォーキングやジョギング、エアロビクスダンスなど、息がはずむ程度の中強度の運動を習慣にしましょう。
目安としては、1日30分程度の有酸素運動を週に5日行い、合計で150分以上を確保するのが理想的です。また、筋力トレーニングで筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、太りにくい身体になります。週に2~3回程度、腕や脚、背中、お腹など大きな筋肉を中心に、自分のできる範囲で筋力トレーニングを行いましょう。筋肉は血糖を取り込む重要な臓器であり、筋力トレーニングによって筋量が増えるとインスリンの効きが良くなり、血糖コントロールや脂質代謝の改善が期待できます6。
このように有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて習慣化することで、内臓脂肪の減少と生活習慣病リスクの改善が期待できます。最初は軽い運動から始め、徐々に運動量を増やすようにしましょう。
メタボリックシンドロームの治療
メタボリックシンドロームそのものに対する特効薬があるわけではなく、高血圧や脂質異常、高血糖などに対して個別に治療を行います。
例えば、血圧が高い場合は降圧薬による治療、脂質異常症がある場合はスタチンなどの脂質降下薬による治療、血糖値が高い場合は食事や運動療法に加えて、糖尿病治療薬の使用を検討します。
それぞれのリスク因子を適切にコントロールし、動脈硬化の進展を食い止めることが目的です。薬物療法を開始するタイミングは患者さんのリスク度合いや生活習慣改善の経過によって判断されます。
まとめ
メタボリックシンドロームそのものには自覚症状がないことも多く、一見すると深刻に感じないかもしれません。
しかし、決して放置して良い状態ではありません。
将来の心筋梗塞や脳卒中、糖尿病発症を防ぐためにも、早めに生活習慣を改善しリスクを減らすことが大切です。無理のない範囲でできることから始め、継続することがメタボリックシンドロームの改善に重要となります。本記事の内容がその一助になれば幸いです。