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認知症介護でイライラしてしまう原因と対処法|怒りを鎮める具体策を解説
更新日:2026-02-18

認知症介護でイライラしてしまう原因と対処法|怒りを鎮める具体策を解説

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家庭内でイライラを隠せない状況

「さっきまた、親に怒鳴ってしまった…」後悔と自己嫌悪で押しつぶされそうになっていませんか。認知症介護でイライラするのは、あなたの性格のせいではありません。一生懸命向き合っているからこそなのです。

この記事では、多くの家族が経験する「イライラ体験談」とともに、怒りのメカニズム、そして今日からできる対処法(アンガーマネジメント・薬・サービス)を解説します。

認知症の親が変わっていく…介護中にイライラ・爆発してしまう瞬間

厚生労働省の調査によると、在宅介護者の約7割が「精神的な負担を感じている」と回答しています1。認知症の親を介護する家族の多くが「優しくしたいのにできない」という苦しみを抱えているようです。

ここでは、介護家族が経験しやすい「イライラの瞬間」を紹介します。

何度も同じことを聞く親に、つい大声を出してしまった日

「ごはんまだ?」「今日は何日?」と、食事の直後や、さっき答えたばかりの質問を認知症当事者の親に何度も繰り返されると、頭ではわかっていても感情が追いつきません。

特に仕事や家事で忙しいタイミングで繰り返されると、「さっき言ったでしょ!」と声を荒げてしまうこともあるでしょう。

認知機能の低下により数分前の出来事が思い出せなくなるため、ご本人は「初めて聞いた」という認識で質問されています。そのため、怒られても理由が理解できず、かえって不安や混乱を招いてしまうのです。

「世話をして当たり前」な態度への怒り

食べこぼしの片付け、汚れた衣類の洗濯、トイレの失敗への対応など、身体的な負担が重なるなか、感謝の言葉がないと「なんのためにやっているんだろう」と徒労感を覚えます。ときには「余計なことをするな」と言われ、心が折れそうになることもあるでしょう。

認知機能の低下が進行すると、相手が自分のために何をしてくれているのかを理解したり、感謝の気持ちを表現したりすることが難しくなる場合があります。「悪気があって言っているわけではない」とわかっていても、報われない気持ちが怒りに変わってしまうのは自然な反応です。

ふとした瞬間の「笑顔」に救われ、また自己嫌悪に陥るループ

認知症の症状は一日の中でも波があり、調子の良いときと悪いときの差が大きい場合があります。怒鳴ってしまった数時間後に、穏やかな表情で「ありがとうね」と言われることも珍しくありません。

その瞬間、「なんであんなに怒ってしまったんだろう」と激しい自己嫌悪に襲われる方も多いものです。落ち着いているときは「いつもの親」に見えるからこそ、自分の対応を責めてしまうのです。この変動が、介護者の期待と落胆のギャップを生み、感情の消耗につながります。

なぜこれほど腹が立つ?認知症介護で「優しくなれない」4つの原因

認知症介護では、「なぜこんなにイライラするのか」と悩む場面が少なくありません。しかし、その感情には理由があります。ここでは、イライラの背景にある原因を整理してみましょう。

慢性的な「介護疲れ」による脳のSOS

介護は長期にわたることが多く、心身の緊張状態が続きやすいものです。睡眠不足や緊張状態が続くと、感情を抑えたり冷静に考えたりする役割をもつ「前頭前野」の働きが低下します。その結果、イライラしやすくなり、思いやりのある対応が難しくなるのです。

「優しくなれない」のは心の弱さではなく、脳が疲れ切っているサインと捉えましょう。

実の「親」だからこそ許せない心理的葛藤

他人であれば受け流せる言動でも、親に対しては許せないことがあります。「しっかりしていた頃の親」と無意識に比べてしまうためです。その落胆や悲しみを処理しきれず、怒りとして表に出てしまうことがあります。

認知症の症状(中核症状・BPSD)への理解不足

暴言や同じ行動の繰り返しは、ご本人が「わざと」しているわけではありません。新しいことを覚えられない「記憶障害」や、今がいつ・どこか分からなくなる「見当識障害」など、認知症の症状によるものです。

ご本人も自分の変化に戸惑い、不安を感じています。「認知症がさせている行動」と理解することで、怒りの矛先が変わり、気持ちが少し楽になるかもしれません。

介護の孤立と支援不足

介護を一人で担い、悩みを相談できる相手がいないと、感情を抱え込んでしまいます。「自分ばかりが我慢している」という思いが強くなるほど、心の余裕は失われていきます。孤立した介護環境そのものが、優しくなれない原因になることもあるのです。

認知症介護のイライラを鎮めるアンガーマネジメント|カッとなった瞬間に

前述の通り、介護中に感じる怒りの感情は自然なものです。ただし、そのまま爆発させてしまうとご本人との関係が悪化し、自己嫌悪にもつながりかねません。
ここでは、カッとなった瞬間に実践できる具体的なテクニックを紹介します。

怒りのピークは長くない。「6秒ルール」の実践テクニック

怒りの感情は、発生から約6秒でピークを過ぎるとされています2。この6秒間をやり過ごすことで、衝動的な言動を防ぎやすくなります。

心のなかでゆっくり「1、2、3、4、5、6」と数える、「大丈夫、大丈夫」と唱える、目に入ったものの色や形を観察するなど、自分にあった方法を見つけてみてください。怒りを「消す」のではなく「やり過ごす」感覚がポイントです。

物理的に距離を取る「トイレ避難(タイムアウト法)」

6秒ルールでは収まらないほど感情が高ぶったときは、物理的にその場を離れましょう。「ちょっとトイレに行ってくるね」と伝え、トイレや洗面所、別室など一人になれる場所へ移動します。冷たい水を飲んだり、窓を開けて深呼吸したりして気持ちを落ち着かせてください。

ご本人の安全を確認したうえで行うことが前提ですが、数分間離れるだけでも冷静さを取り戻せることがあります。これは逃げではなく、感情が爆発する前に自分を守るための行動です。

「期待値」を下げる思考法(60点主義のすすめ)

「ちゃんと介護しなければ」「親に優しくしなければ」という思いが強いほど、できなかったときの怒りや自己嫌悪も大きくなります。完璧な介護を目指すのではなく、「今日も食べて寝られたら100点」とハードルを下げてみましょう。

介護者はご本人のために、あれもこれもと頑張りすぎてしまいがちですが、「60点で合格」と割り切ることが大切です。そのほうが落ち着いた気持ちで介護に向き合え、心に余裕が生まれます。

認知症の親への「声かけ・接し方」|イライラを減らす場面別の対応

ここからは、場面別の対応のコツを紹介します。接し方を少し変えるだけで、お互いのストレスが和らぐことがあります。

同じ話を繰り返す時は「肯定」して受け流す

「それ何回目?」「さっきも聞いた」と否定したくなる気持ちはよくわかります。しかし、否定や説得は逆効果で、ご本人の不安や混乱を強めてしまいます。

認知症の方が同じ話を繰り返すのは、記憶障害によって「さっき話したこと」自体を覚えていないためです。不安から同じ質問や話題を繰り返してしまうのです。

「そうなんだね」「へえ、それは知らなかった」と受け止め、相槌を打ちながら受け流してみましょう。話題を変えたり、「ちょっと玄関を掃除してくるね」とその場を離れたりするのも一つの方法です。

介護拒否(お風呂・着替え)には「タイミングずらし」

入浴や着替えを嫌がるときに無理に進めると、かえって抵抗が強くなり、お互いに疲れてしまいます。そんなときは「じゃあ、また後にしましょうね」と一度引き下がり、時間を置いてから改めて声をかけてみましょう。

どうしても難しい場合は、訪問介護やデイサービスなどプロの手を借りるのも一つの方法です。デイサービスでも入浴を拒否する方はいますが、他の利用者が入っている様子を見ると安心して、すんなり入ってくれる方もいます。

このように「自分でやらなければ」と抱え込まず、頼れるサービスを上手に活用することが大切です。

「物を盗られた」という妄想には一緒に探す

「財布を盗られた」「誰かが家に入ってきた」といった妄想は、認知症でよくみられる症状のひとつです。頭ごなしに否定すると「信じてもらえない」という不安が強まり、かえって症状が悪化することがあります。

まずはご本人の言い分をしっかりと聞き、「それは大変だね、一緒に探そう」と声をかけてみましょう。一緒に探しながら、本人が見つけられるように促すのがポイントです。

あるいは、しばらく付き合ってから「あとでまた探そうね」と話題を変えるのも良いでしょう。気持ちを受け止める姿勢が、安心感につながります。

もう限界…と感じたら薬や介護サービスの検討を

「もう限界だ」と感じたら、それは心身が悲鳴を上げているサインです。外部の力を借りることは「逃げ」ではありません。ここでは、介護を続けていくための具体的な解決策を見ていきましょう。

暴力・暴言が続く場合は医療的なアプローチの検討を

暴力や暴言が続く場合、認知症の周辺症状であるBPSDが影響している可能性があります。

そのような場合、薬の使用といった医療的なアプローチはひとつの助けになるかもしれません。進行を遅らせる「抗認知症薬」の調整や、必要に応じた「向精神薬」の使用によって、症状が落ち着くケースもあります。

薬に頼ることに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、適切な治療はご本人のつらさを和らげ、生活の質(QOL)を高めることにつながります。結果として、介護するご家族の負担軽減にもなるのです。必要な場合は、かかりつけ医や認知症の専門医への相談を検討しましょう。

ショートステイで「物理的な距離」を確保する

介護保険で利用できるショートステイ(短期入所生活介護)は、数日間施設に宿泊するサービスです。「親を預けるのは申し訳ない」と感じるかもしれませんが、共倒れを防ぐためにも定期的な利用を検討してみましょう。

数日間離れるだけで心身がリセットされ、また優しい気持ちで向き合えるようになるはずです。

施設入居は「プロに任せる」という前向きな選択

施設入居を選ぶことは、親を「見捨てる」ことではありません。「プロの手を借りて、安全に暮らしてもらう」という、ご本人を守るための決断です。

認知症の症状が進行すると、24時間365日の見守りを家族だけで続けることには限界があります。

入居後は「介護者」ではなく「家族」として面会でき、穏やかな時間を過ごせるようになったという方も多くいます。施設という選択肢を前向きに検討してみましょう。

イライラを吐き出す場所を作ろう|自分の人生を一番に

介護を続けるためには、介護する方が元気でいることが不可欠です。イライラや辛さを吐き出せる場所を意識的に作りましょう。

誰かに話すだけで楽になることも(認知症カフェ)

同じ立場の人に話を聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなることがあります。

「認知症カフェ」では悩みを共有したり、情報交換をしたりできます3。各地域で開催されているので、お住まいの地域で探してみてください。自分と同じような悩みを抱える人と自由に話せる場を持つことが、大きな支えになります。

1日30分、「介護を忘れる時間」を死守する

自分の心を充電することは「手抜き」ではありません。介護生活を長く続けていくために欠かせない大切な時間です。

好きな音楽を聴く、コーヒーをゆっくり飲む。内容はなんでも構いません。1日30分でも、意識して「介護から離れる時間」を作ってみてください。

「書いて吐き出す」(日記・ブログのすすめ)

その日の出来事や感情を文字にして書き出すことも心の「避難所」となります。書くことで自分を客観視でき、「親は不安だったのかもしれない」「そこまで怒らなくてもよかったかも」といった気づきが生まれることがあるからです。

今日何が起き、何に腹が立ち、どう感じたのか。素直に書き出すことで頭と心が整理され、イライラが和らぐこともあります。きれいな文章でなくて構いません。まずは1行だけでも、今の気持ちを書いてみましょう。

ケアマネジャーには「優等生」でいる必要はない

ケアマネジャーとの面談の際、本当はつらいのに、つい「大丈夫です」「なんとかやれています」と話してしまうことがあります。しかし、SOSは正直に伝えなければ届きません。

「つらい」「限界だ」と話すことで、サービスの追加やケアプランの見直しにつながります。遠慮せず、今の状況をありのままに相談してみてください。

まとめ

親にイライラしてしまうのは、あなたが真剣に向き合っている証拠です。怒りの原因は「介護疲れによる脳の疲労」「親だからこその心理的葛藤」「認知症の症状への理解不足」にあり、あなたの性格の問題ではありません。

怒鳴ってしまった日は、自分を責めるのではなく「疲れが溜まっているサイン」と捉え、休息をとってください。6秒ルールやタイムアウト法などのアンガーマネジメント、声かけの工夫で日々のストレスを軽減できます。それでも辛いときは、専門医への相談やショートステイ、施設入居といった選択肢も検討しましょう。

介護を続けていくためには、あなた自身が心身ともに健康でいることが大切です。一人で抱え込まず、プロの力を頼りましょう。

 参考文献

1, 厚生労働省:2022年(令和4年) 国民生活基礎調査の概況.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html](最終閲覧日:2026年1月13日)
2, 一般社団法人日本アンガーマネジメント協会: アンガーマネジメントとは
https://www.angermanagement.co.jp/about](最終閲覧日:2026年1月13日)
3, 厚生労働省:よくわかる!地域に広がる認知症カフェ
https://www.mhlw.go.jp/content/001241168.pdf](最終閲覧日:2026年1月13日)

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