病気やけが、認知症などで介護が必要になった方は、さまざまな介護保険サービスを利用することができます。介護保険制度における要介護度は、介護度の低い要支援と自立した日常生活を送ることが難しくなる要介護に分けられ、それぞれ利用できるサービスが異なります。
本記事では、要支援の方も利用可能な訪問介護・通所介護・ショートステイの3つのサービスや、その他のサービスついて詳しく解説します。
要支援1や要支援2はどのような方が該当するか
介護保険制度は、65歳以上または40~64歳で特定疾病により介護が必要と認定された方が各種サービスを利用できる制度です。
要介護度は介護の必要度が低い要支援と高い要介護に分けられ、要支援は1・2、要介護は1~5に分類されます。
要支援1と2の違いは以下のとおりです。
● 要支援1
・日常生活動作(食事・排泄・掃除など)は自分でできる
・買い物や金銭管理などの一部に見守りや介助が必要な状態
● 要支援2
・要支援1の状態に加え、下肢の筋力低下などがみられる
・今後介護が必要になる可能性が高い状態
なお、要介護認定の詳細については別記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
要支援の方が利用できる訪問型のサービス
要支援の方が利用できる訪問型のサービスには、介護予防訪問入浴介護・介護予防訪問看護・介護予防訪問リハビリテーションなどがあります1。
ここでは、介護予防訪問看護について紹介します。
介護予防訪問看護について
介護予防訪問看護は、訪問看護ステーションや病院などから保健師・看護師・准看護師が家庭を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。
対象は要支援1・2と認定された方で、主に次の10種類の支援を受けられます2。
・ 症状・障害の観察(血圧、体温チェック)
・ 清拭・洗髪等による清潔の保持
・ 食事及び排泄等日常生活の世話
・ 褥瘡の予防・処置
・ リハビリテーション
・ ターミナルケア
・ 認知症の当事者に対する看護
・ 療養生活や家族への介護方法の指導・相談
・ 人工呼吸器、カテーテル等の医療機器管理
・ 医師の指示による医療処置
介護予防訪問看護の自己負担額は、事業所の種類や訪問時間によって異なります。
介護予防訪問看護の1回における自己負担額の基本料(回)

(文献2を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
※上記に加えて、時間帯や事業者の体制などによる加算・減算、初回加算などあり
要支援の方が利用できる通所型のサービス
要支援の方が利用できる通所型のサービスには、介護予防通所リハビリテーション(デイケア)や介護予防認知症対応型通所介護があります。
ここでは、両者について解説します。
介護予防通所リハビリテーション
介護予防通所リハビリテーションはデイケアとも呼ばれ、リハビリテーションや運動機能の向上・改善、一部の介護などが行われるサービスです。
デイサービスと似ていますが、デイケアは要支援1・2の方も対象に含まれ、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職によるリハビリテーションを受けられる点が特徴です3。
また、デイケアは病院などの医療機関に併設されているため、必要に応じて医療的ケアを受けられる環境が整っています。
要支援1・2の方がデイケアを利用する場合の費用は、以下のとおりです。
通所リハビリテーションの基本料(月)

(文献2を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
※事業者の体制による加算・減算あり
デイケアやデイサービスについては別記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
介護予防認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護は、認知症の当事者が日常生活上の支援や機能訓練を受けられるサービスです。心身機能の維持や孤立感の解消、家族の負担軽減を目的としています4。
つまり、認知症の当事者を対象としたデイサービスであり、食事や入浴などのお世話・機能訓練・口腔機能向上サービスなどが日帰りで提供されます。
対象は認知症と診断された要介護1以上の方ですが、要支援の方の場合、介護予防を目的とした介護予防認知症対応型通所介護の利用が可能です5。
要支援1・2の方が、介護予防認知症対応型通所介護を利用する場合の費用は、以下のとおりです。
介護予防認知症対応型通所介護の基本料(回)

(文献2、6を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
※事業所の体制や入浴介助、口腔ケアなどの内容により加算あり
※送迎にかかる費用を含む
※日常生活費(食費・おむつ代)などは別途負担
※単独型施設とは介護予防認知症対応型通所介護のみを扱う形態、併設型施設とは特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、既存の福祉施設に併設された形態、共用型施設とはグループホームや地域密着型の特養などの食堂や共同生活室などを共用して行う形態
要支援の方が利用できるショートステイのサービス
要支援の方でも、宿泊を含む介護保険サービスを利用することができます。代表的なものは介護予防短期入所生活介護と介護予防小規模多機能型居宅介護です。
ここでは、両者のサービスについて解説します。
介護予防短期入所生活介護
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)は、利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復に加え、家族の負担軽減などを目的としたサービスです7。
特に家族の負担を和らげる役割が大きく、冠婚葬祭などで自宅を留守にする場合や、介護者が体調を崩した際などにも活用できます。
ショートステイには専門施設で行う単独型と、介護老人福祉施設に設置された併設型があり、併設型の場合は長期入所者とは別の部屋で宿泊します。
要支援1・2の方が介護予防短期入所生活介護を利用する場合の費用は、以下のとおりです。
介護予防短期入所生活介護の基本料(回)

(文献2、8を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
※利用者に応じたサービス提供(食事や送迎など)により費用が異なる場合あり
※連続利用が30日を超えた場合、31日からは全額自己負担
※単独型の場合は、自己負担額がやや高額となる
※事業所によって加算が加わる場合あり
介護予防小規模多機能型居宅介護
介護予防小規模多機能型居宅介護は、通い(デイサービス)を中心として、利用者の希望に合わせて、訪問(訪問介護)や泊まり(ショートステイ)を組み合わせて利用できるサービスです9。
一つの事業者と契約すれば、通い・訪問・泊まりをすべて同じ施設で受けられるため、別々の施設を利用する必要はありません。
認知症の当事者も、慣れた環境や同じスタッフによる連続性のあるケアで、安心して過ごすことができます。
要支援1・2の方が介護予防小規模多機能型居宅介護を利用する場合の費用は、以下のとおりです。
介護予防小規模多機能型居宅介護の基本料(月)

(文献2、10を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
※日常生活費(食費・宿泊費・おむつ代など)は、別途負担する必要あり
要支援の方が利用できるその他のサービス
これまで紹介したサービス以外にも、要支援の方が利用可能なサービスはいくつかあります。
ここでは、介護予防特定施設入居者生活介護と介護予防認知症対応型共同生活介護の2つのサービスについて解説します。
介護予防特定施設入居者生活介護
介護予防特定施設入居者生活介護は、特定施設(有料老人ホーム・ケアハウス・養護老人ホーム)において、日常生活の支援や機能訓練を行い、自立した生活を支援するサービスです11。
形態は、施設の従業者が介護サービスを提供する一般型と、外部の事業者が提供する外部サービス利用型に分かれます11。
提供されるサービスには、食事・入浴・排泄などの介護全般、リハビリテーションなどの機能訓練や療養上の世話などが含まれます。
要支援1・2の方が介護予防特定施設入居者生活介護を利用する場合の費用は、以下のとおりです。
特定施設入居者生活介護の基本料(日)

(文献2、12を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
※入居費用・日常生活費(おむつ代など)は、別途負担する必要あり
介護予防認知症対応型共同生活介護
介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の当事者が共同生活の中で専門的ケアを受けられるサービスです13。
家庭的な環境と地域住民との交流の中で、日常生活上の支援や機能訓練を行い、利用者の能力に応じた日常生活を営むことを目的としています13。
このサービスは認知症と診断された方が対象となり、要支援1の方は利用できません。
要支援2の方が介護予防認知症対応型共同生活介護を利用する場合の費用は、以下のとおりです。
介護予防認知症対応型共同生活介護の基本料(日)

(文献2、14を参考に作成)
※1割負担・1単位10円で算出
※地域区分による加算(最大1.14倍)が追加されることもある
まとめ
介護度が低い要支援1・2の方でも、要介護状態への進行を防ぐために介護予防サービスを利用することができます。介護予防サービスにはこの記事で紹介した以外にも多様なサービスがあるため、ご自身やご家族が要支援の場合は、ケアマネージャーなどに相談して適したサービスを選びましょう。