脳とビタミンの関係は?脳の活性化や疲労への影響・効率的な摂取方法を解説

ビタミンと聞くと「肌によい」「免疫力を上げる」などのイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかしビタミンは、身体だけでなく脳の働きを支えるうえでも欠かせない栄養素です。
ビタミンは体内ではほとんどつくられないため、毎日の食事から摂取することが大切です。
本記事では、ビタミンの脳での主な働き、ビタミンの不足がもたらす脳への影響、ビタミンを効率よく摂取するポイントなどを解説します。
脳におけるビタミンの主な役割
脳の働きを支えるビタミンには、それぞれ役割があります。
ここでは役割ごとに、関与するビタミンを見ていきましょう。
エネルギーの代謝を助ける
脳の主なエネルギー源は糖質です。
実は、この糖質をエネルギーに変換するのに欠かせないのが、ビタミンB1とナイアシンです。
ビタミンB1は糖質をエネルギーとして利用する過程に関わり、ナイアシンは糖質に加えて脂質やタンパク質からエネルギーをつくる際にも利用されます。
神経伝達物質の生成を助ける
ビタミンB6は脳内で「神経伝達物質」の合成に不可欠な栄養素です。
神経伝達物質とは、脳や身体の細胞間で情報を伝えるときに使われる化学物質です。セロトニン、ドーパミン、アドレナリンなどがあります。
セロトニンやドーパミンなどの主な材料はアミノ酸ですが、アミノ酸だけでは神経伝達物質を作ることはできません。
ビタミンB6は、アミノ酸を神経伝達物質に変換する「酵素」と結び付き、神経伝達物質の生成をサポートする「補酵素」としての重要な役割があります。
脳の機能を支える神経伝達物質が作られるためには、ビタミンが必要不可欠なのです。
神経細胞を保護する
脳内には「身体を動かす」「感じる」「考える」などの情報をやり取りする「神経細胞」が多く存在しています。
一部のビタミンは、神経細胞を守る働きを持ち、脳機能を維持しています。
ミエリン鞘の保護
神経細胞には「軸索」と呼ばれる細長い突起があり、軸索の周囲は「ミエリン鞘(しょう)」という刀の鞘(さや)のような構造に取り囲まれています。
(神経細胞のイメージ:文献8を参考に編集部作成)
神経細胞の正常な働きを助けるのが、ミエリン鞘の役割です。
素早い神経伝達や神経細胞の物理的な保護、神経細胞の栄養補給などの役割を担っています。
ビタミンB12と葉酸はミエリン鞘の形成や維持に関わり、神経細胞が正常に働けるようサポートしています。
細胞を酸化ストレスから守る
ビタミンは細胞を酸化ストレスから守るためにも重要な役割を果たします。
身体の中では、酸素を使ってエネルギーを生み出す代謝がおこなわれており、その過程で「酸化」が起こります。
酸化の際に生じる「活性酸素」という物質が何らかの原因で増えすぎると、細胞を傷つけてしまうことがあります。この状態が「酸化ストレス」です。
特に脳は身体の中でも酸化ストレスに弱く、脳の働きにさまざまな不調が起こるといわれています。
ビタミンCとビタミンEは抗酸化作用(細胞の酸化を防ぐ働き)を持っており、酸化ストレスから脳を守る役割があります。
脳に必要なビタミンの種類と豊富に含む食材
ビタミンは、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」と、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」の2種類に分けられます。
これらのうち、脳の働きに関わる主なビタミンについて、働きと多く含まれる食品を見てみましょう。
水溶性ビタミン
水溶性ビタミンは、多く摂りすぎると尿から排泄されてしまうため、体内にほとんど貯蔵できないビタミンです。食事からこまめに摂取することが大切です。
ビタミンB1
ビタミンB1の主な働きは、糖質をエネルギーに変えることです。
生み出されたエネルギーは、脳や神経のほか、筋肉など身体のさまざまな部分で利用されます。
ビタミンB1が多く含まれているのは、以下の食品です。
- 豚肉
- 玄米
- 豆類
ビタミンB6
ビタミンB6はアミノ酸から神経伝達物質が合成される過程に関わるほか、タンパク質の代謝にも関与します。
タンパク質は筋肉や臓器、皮膚、毛髪などをつくる材料となります。
ビタミンB6が多く含まれているのは、以下の食品です。
- レバー
- 肉類
- 魚類
- 大豆
ビタミンB12
ビタミンB12は、神経細胞の保護・維持に関わります。また、血液の成分である赤血球の生成に関わります。
ビタミンB12が多く含まれているのは、以下の食品です。
- レバー
- 肉類
- 魚類
- 貝類
- 卵
- 牛乳や乳製品
葉酸
葉酸は、ビタミンB12とともに神経細胞の維持に関わり、神経細胞の生成や修復に必要な核酸の合成をサポートします。また、赤血球の生成を助けます。
葉酸が多く含まれているのは、以下の食品です。
- 豆類
- 緑黄色野菜
- レバー
- のり
- 緑茶
ナイアシン
ナイアシンはエネルギーの産生や、さまざまな働きを持つ酵素の活動をサポートします。そのほか、皮膚や粘膜の健康維持に役立ちます。
ナイアシンが多く含まれるのは、以下の食品です。
- レバー
- 肉類
- 魚類
- 落花生
ビタミンC
ビタミンCは脳内の活性酸素の除去に関わり、細胞を酸化やストレスから守ります。
コラーゲンの合成に関与したり、免疫機能を支えたりしています。
ビタミンCが多く含まれるのは、以下の食品です。
- 緑黄色野菜
- かんきつ類
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンは身体の脂質と一緒に貯蔵されます。過剰に摂取すると体内に蓄積し、体調不良を起こすことも。サプリメントを服用する際は注意しましょう。
ビタミンE
抗酸化作用を持つビタミンEは、細胞膜の脂質の酸化を防ぎ、細胞や血管の健康を保つ働きがあります。
ビタミンEが多く含まれるのは、以下の食品です。
- 植物油
- 緑黄色野菜
- 落花生
- うなぎ
ビタミンが不足した場合の脳の健康への影響
現代の通常の食生活が送れていれば、深刻なビタミン不足(ビタミン欠乏症)は起こりにくいと考えられています。
しかし、外食やコンビニ食品、インスタント食品などの加工食品の頻度が多かったり、欠食やダイエットなど、偏った食生活によりビタミンは不足しがちなので注意が必要です。
脳に関わるビタミンが不足すると、以下のような症状が起こる場合があります。
脳疲労
テレビなどで取り上げられることもある「脳疲労」にも、ビタミンが関係します。
「脳疲労」という言葉は、正式な医学用語ではありません。
さまざまなストレスにより脳が疲れてうまく機能せず、仕事や日常生活に支障をきたしている状態を表す際に使われます。
具体的には「疲れやすい」「眠れない」「イライラする」といった状態が見られます。
このとき脳では、次のようなことが起きています。
- 神経伝達物質量の乱れ(枯渇・過剰放出)
- 前頭前野(脳の司令塔)の機能低下
- ホルモンバランスの乱れ
- 交感神経の過活動
脳のエネルギー代謝や神経伝達物質の生成に関わるビタミンを含め、バランスのよい食事を摂ることは、心身の健康を保つうえで大切です。
脳疲労の状態が長く続くと、精神的な不調やうつ病などの精神疾患に進行する可能性もあります。日頃から、ビタミン補給や生活習慣の見直しなど対処することが大切です。
認知機能の低下
ビタミンB群(B1、B6、B12、ナイアシン、葉酸など)が不足すると、認知機能の低下が起こりやすいといわれています。
認知機能の低下とは、注意力や判断力、集中力などがうまく働かなくなることです。
仕事の効率が悪くなったり、以前は無かったミスが増えるといった、パフォーマンスの低下には、ビタミン不足が関係しているかもしれません。
脳の萎縮や認知症リスクの上昇
ビタミン不足が長期にわたると、脳の構造や機能に影響が及ぶ可能性があります。
例として、ビタミンB1欠乏による「ウェルニッケ脳症」やナイアシン欠乏による「ペラグラ」は、神経症状や精神症状をともなう疾患です。
さまざまな研究により、ビタミンの欠乏が脳の萎縮や認知症のリスクを高める可能性があると報告されています。
特に認知症はさまざまな要因が関与する状態であり、栄養管理もそのひとつです。
日頃からバランスのよい食事を心がけ、ビタミン不足を防ぐことが脳の健康維持につながります。
ビタミンを効率よく摂取するためのポイント
ビタミンを効果的に摂取するための工夫や、避けたい習慣を紹介します。
アルコールは適量を守る・飲みすぎない
ビタミンBは、アルコールの分解で大量に消費されます。
お酒を飲みすぎるとビタミンB1、B6、B12、葉酸が不足しやすくなり、体内でエネルギーをうまくつくれず疲れやすくなります。
飲酒は適量を心がけ、お酒を楽しんだときはビタミンの摂取を心がけましょう。
水溶性ビタミンは煮汁ごと摂る
水溶性ビタミンは水に溶けやすいため、水を使って加熱調理すると煮汁に溶けだしてしまいます。スープや煮込み料理など、煮汁ごとビタミンを摂取できるメニューにするとよいでしょう。
「蒸す」「いためる」「揚げる」などの調理法でも、効率よく水溶性ビタミンを摂取できます。
質のよい油と一緒に摂って吸収をよくす
脂溶性ビタミンであるビタミンEは、油と一緒に摂ることで体内に吸収されやすくなります。
特に、ビタミンEを含む食品を植物油を使って揚げると、揚げない場合と比べて多くのビタミンEを摂取できるとの報告があります。
一度に多く摂るより小分けで摂取する
水溶性ビタミンは、摂りすぎると尿として排泄されるため、多く摂って体内にためておくことはできません。
食事のたびに少しずつ摂取した方が、体内で効率よく利用できます。
サプリメントも活用する
健康を維持するため、食べ物以外にサプリメントからもビタミンを摂取できます。
普段の食事からの摂取では、ビタミンが不足する場合は活用するとよいでしょう。
一方で、サプリメントはあくまで補助的に活用し、ビタミンは食事から摂取できるように心がけましょう。ビタミンの過剰摂取が体調を崩す原因になることもあるので、食事内容を踏まえて活用してください。
薬との飲み合わせがよくないこともあるので、薬を服用中の場合は事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
ストレス環境や喫煙を避ける
ストレスや喫煙は、酸化ストレスを高める要因になります。酸化ストレスが高まると、身体を活性酸素から守るため、ビタミンCとEの大量消費につながります。
ビタミン不足を避けるためには、食事やサプリメントからの摂取だけでなく、ストレスを溜め込まないようにしたり禁煙したりするなど、ビタミンの減少につながる習慣を見直すことも大切です。
ビタミンに関するよくある疑問
ビタミンに関するよくある疑問について解説します。
妊娠中の葉酸摂取が胎児の脳や神経の発育に重要な理由は?
神経の保護や、細胞や血液をつくる際に欠かせない葉酸は、胎児の発育にも必要なビタミンです。
妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の脳や脊髄のもとになる神経管をうまくつくれず、二分脊椎や無脳症を招く神経管閉鎖障害の発症リスクが高まります。
そのため、妊娠初期の妊婦、妊活中または妊娠の可能性がある女性に対し、1日あたり400μgの葉酸摂取を厚生労働省は推奨しています。
ビタミンB1は赤ちゃんの脳の発育にとって重要?
最近の調査で、乳幼児の脳の発育においてビタミンB1が重要であることが明らかになりました。
母乳中のビタミンB1量は母親の栄養状態の影響を受けるため、授乳期の母親の栄養状態をよくすることが大切です。
ビタミンは大人だけでなく、胎児や乳幼児の脳の発達にも重要な役割を果たしています。
ビタミンB1は覚醒に関わる?
近年の研究で、ビタミンB1が脳の覚醒を誘導する可能性があることが報告されています。
栄養剤として広まっている「チアミン誘導体(ビタミンB1に加工を加えたもの)」をラットに投与したところ、脳内のドーパミンが増え身体活動量が増加したのです。
ただし、まだ動物実験の段階なので、ヒトの身体に同様の効果があるかは今後の検証が必要とされています。
まとめ:ビタミンは脳機能の維持に必要不可欠!意識的に摂取しよう
ビタミンは脳において重要な役割を担う栄養素です。体内のビタミンが不足すると脳疲労や認知機能の低下など、さまざまな不調が起こる可能性があります。
多くのビタミンは体内で十分につくれないため、食事からの定期的な摂取が欠かせません。偏った食生活を避けて良好な生活習慣を維持したり、調理方法を工夫したりすることで、ビタミンを有効に活用できます。必要に応じてサプリメントの活用も有効です。
脳の健康を保つために、ビタミンを適切に補うことを心がけましょう。
この記事の補足情報
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著者情報
- PROFILE/ プロフィール

伊藤 たえ
赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長 ■Profile 2004年 浜松医科大学医学部 卒業 2004年 浜松医科大学付属病院 初期研修 2006年 浜松医科大学脳神経外科 2013年 河北総合病院脳神経外科 2016年 山田記念病院脳神経外科 2019年 菅原脳神経外科クリニック 2019年 現職 ■所属学会 日本脳神経外科学会専門医 日本脳卒中学会専門医 日本脳ドック学会認定医
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