【執筆者】朝水 裕一
「介護施設の種類が多すぎて、どれを選べばいいのかわからない」「介護保険は利用できるのだろうか?」介護施設の利用を検討する際、このような悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
介護施設は利用するご本人・ご家族の状態や目的に合わせて選ぶため、それぞれの特徴を理解しておく必要があります。
この記事では、介護保険を利用できる介護保健施設のほか、その他の施設の特徴などを解説します。ぜひ最後までお読みいただき、介護施設を選ぶ際の参考にしてください。
介護施設の分類
介護施設にはさまざまな種類がありますが、介護保険を利用できる介護保険施設と、民間企業が運営する介護施設に分類されます。
介護保険施設は、地方自治体や社会福祉法人などが運営する施設です。介護保険制度に基づいてサービスが提供されるため、費用負担が比較的抑えられる傾向にあります。ただし、入居までの待機期間が長かったりするケースも少なくありません。
一方、民間企業が運営する施設は、サービス内容や設備が充実する施設があったり、入居条件も比較的緩やかで選択肢が幅広い点が特徴です。
介護保健施設の種類や特徴について
介護保健施設には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院の3種類があります1〜4。
種類 |
特徴 |
入居条件 |
費用に関して |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養) |
・常に介護が必要な方が入所する ・入浴、食事といった日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話などを行う |
要介護3以上の方(原則) |
・介護保険1割、2割または3割負担 |
介護老人保健施設(老健) |
・在宅生活への復帰を目指す施設 |
要介護1以上の方 |
・介護保険1割、2割または3割負担 |
介護医療院 |
・長期的な医療と介護が必要な方のための施設 ・療養上の管理、看護、介護、機能訓練、その他必要な医療と日常生活に必要なサービスなどを提供 ・介護医療院は入所対象者の状態によってⅠ型とⅡ型に分かれる |
要介護1以上の方 |
・介護保険1割、2割または3割負担 |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)は、要介護3以上の認定を受け、認知症や寝たきりなど、常に介護が必要な方のための施設です。食事、入浴、排泄といった日常生活全般の介護や健康管理に関するサービスを提供しています1, 2。
看取りまで対応してくれる施設が多いことが特徴です。さまざまな費用軽減制度が設けられており人気が高く、入居まで長期間待たなければならない場合があります。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、在宅生活への復帰を目指す施設です。医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの専門スタッフがチームを組み、医師の指示のもと、リハビリテーション、日常生活の介護、機能訓練などを提供しています。人員基準で医療関係者が重点的に配置されていることも特徴の1つです1, 3。
在宅復帰を目的としているため、入居期間は原則3〜6カ月程度です。長期間の入所を希望する方には向いていない点に注意が必要です。
介護医療院
介護医療院は要介護高齢者の長期療養・生活のための施設です。
要介護者で長期にわたり療養が必要な方に対して、療養上の管理、看護、医学的管理のもとで介護や機能訓練、その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的としています1, 4。
また、介護医療院は入所対象者の状態によってⅠ型とⅡ型に分かれており、Ⅰ型は介護療養病床相当、Ⅱ型は老人保健施設相当以上(主な利用者像はⅠ型より比較的容体が安定した方)となっています1, 4。
介護保健施設以外の施設・住宅の種類や特徴について
ここでは、介護保険施設以外の施設・住宅について、それぞれの特徴などを解説します1, 5〜10。
施設の種類 |
施設の特徴 |
入居条件 |
費用に関して |
---|---|---|---|
養護老人ホーム |
・環境や経済的に困窮した高齢者のための施設 ・身の回りのことをご自身でできる方が対象 |
65歳以上の高齢者、市区町村の老人福祉法に基づく措置決定により入居 |
前年度の収入によって、段階的に変動 |
軽費老人ホーム |
・⾷事など、⽇常⽣活上必要な便宜を提供する施設 ・軽費⽼⼈ホームA型、B型、都市型ケアハウスといくつかの種類が存在する |
家庭環境、住宅事情等の理由で在宅での⽣活が困難な60歳以上の高齢者 |
前年度の収入によって、段階的に変動 |
有料老人ホーム |
・介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設 ・介護サービスの提供方法等により、介護付き、住宅型、健康型の3種類に分類 |
施設によって異なる |
施設によって異なる |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) |
・認知症の当事者を対象にした専門的なケアを提供する施設 ・可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、食事や入浴などの日常生活上の支援、機能訓練などのサービスを受ける ・1つの共同生活住居に5~9人が介護スタッフとともに共同生活を送る |
・原則、要介護1以上で、比較的安定状態の認知症症状がある方が利用可能 |
介護保険1割、2割または3割負担のほか、食材料費、おむつ代、家賃相当額等の負担が必要
|
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) |
・介護・医療と連携して、入居者に状況把握サービス及び生活相談サービスを提供する ・高齢者の居住の安定を確保するためバリアフリー構造等を有する ・食事の提供、入浴・排せつまたは食事の介護、洗濯・掃除等の家事または健康管理のいずれかのサービスを提供する住宅もある |
60歳以上または要介護・要支援認定を受けている方で単身の方、同居者が配偶者、60歳以上の親族などの条件 |
家賃、前払金の有無をはじめ、住宅により異なる |
養護老人ホーム
養護⽼⼈ホームは、生活環境や経済的な理由により、65歳以上の高齢者が市区町村の老人福祉法に基づく措置によって入居する施設です。
身の回りのことを自分でできる方が対象となります。施設に介護サービスは原則ありませんが、なかには外部の介護サービスも利用できる施設もあります1, 5, 6。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは、家庭環境、住宅事情等の理由により居宅において⽣活することが困難な高齢者が⼊所し、⾷事など⽇常生活で必要なサービスを無料または少ない費用で提供する施設です。
A型、B型(自炊ができる方)、都市型、ケアハウス(身体機能の低下などにより独立して生活を営むことに不安があり、家族による援助を受けることが困難な方を対象)といった区分があります1, 5, 6。
有料老人ホーム
有料老人ホームでは「食事の提供」、「入浴、排せつまたは食事の介護」、「洗濯、掃除などの家事」または「健康管理」のいずれかのサービスを提供します。有料老人ホームは次の3種類に分類されます1。
① 介護付き有料老人ホーム
特別養護老人ホームと同様のサービスを受けることができ、生活支援、身体介護、リハビリテーション、レクリエーション、食事などが主なサービスの内容です。介護が必要になっても居室で生活を継続することができます7。
② 住宅型有料老人ホーム
生活支援等のサービスを提供する高齢者向けの居住施設で、介護が必要となった場合には入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら生活することができます7。
③ 健康型有料老人ホーム
食事など日常生活で必要なサービスを提供する高齢者向けの居住施設です。介護が必要となった場合は、契約を解除して退去する必要があります7。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の当事者を対象に専門的なケアを提供する施設です。利用者は5~9人の共同生活のなかでそれぞれ役割をもち、家庭的な環境で日常生活を送り、入浴や食事等の介護等のサービスを受けることができます1, 8。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー構造や一定の面積、設備といった基準を満たし、ケアの専門家による安否確認サービス、生活相談サービスといった見守りサービスを有する高齢者向けの賃貸住宅です9。
サ高住はあくまでも「住宅」の扱いです。生活の自由度が高い一方で、終身利用を前提としていない点には注意が必要です。
入居対象は、①60歳以上または要介護・要支援認定を受けている方で単身の方、②60歳以上または要介護・要支援認定を受けている方で同居者が配偶者、60歳以上の親族などの条件があります10。詳細は事業者へ確認してください。
まとめ|介護施設の種類や特徴を解説:大切なご家族のための施設選びのポイントとは?
本記事では、介護保険施設、代表的な高齢者向けの住まいについて解説しました。
介護施設選びで大切なのは、それぞれの施設の特徴を知り、ご本人の状態や目的に合った施設を選ぶことです。
理想の介護施設を見つけるためには、情報収集が欠かせません。インターネットやパンフレットなどで情報を集め、気になる施設があれば見学に行ってみましょう。施設選びに迷ったときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、高齢者福祉の専門家からアドバイスをもらうことをおすすめします。
大切なご家族が安心して生活できる環境を整えましょう。
【執筆者】朝水 裕一
保有資格:介護福祉士、ケアマネジャー、認知症ケア専門士、第1種衛生管理者