糖尿病には1型糖尿病や2型糖尿病、妊娠糖尿病など種類がありますが、それぞれの違いについて分からない方もいらっしゃるでしょう。
それぞれの原因や症状、治療法などの特徴だけでなく公的な治療サポートや予防についても解説します。
糖尿病で高血糖になってしまう要因
高血糖の要因として挙げられるのは、インスリン抵抗性とインスリンの分泌低下の2つです。糖尿病は主に1型と2型の2種類に分類され、両者とも血糖値が上昇する病気ですが、発症のメカニズムが大きく異なります。
血糖値を正常に保つためには、インスリンというホルモンが膵臓のβ細胞から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります1。インスリンの「効き目が弱まっている状態」とインスリン「分泌量が足りなくなっている状態」により、高血糖になってしまうのです。
インスリン抵抗性がある
インスリン抵抗性とは、インスリンの働きが弱くなっている状態です。細胞がインスリンに反応しにくくなることで、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込めなくなります。
インスリン抵抗性は、肥満や運動不足、ストレスなどの生活習慣が関係していると考えられており、内臓脂肪型肥満の人はインスリン抵抗性が起きやすい状態です。また妊娠糖尿病の方も、インスリン抵抗性が高くなって血糖値が上がりやすくなります。
インスリン抵抗性が続くと、膵臓はより多くのインスリンを分泌しようとして疲弊してしまい、最終的にインスリンの分泌量が減少してしまいます2。
インスリンの分泌低下
インスリンの分泌低下は、膵臓のβ細胞の機能が低下することで起こります。1型糖尿病では、自己免疫反応によってβ細胞が破壊されるためインスリンがほとんど分泌されません。
一方2型糖尿病では、長期間のインスリン抵抗性によってβ細胞が疲弊し、徐々にインスリンの分泌量が減少していきます。インスリンの分泌が低下すると、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込めないため、血糖値が上昇してしまいます2。
糖尿病の1型と2型それぞれの特徴
1型糖尿病と2型糖尿病の特徴をそれぞれまとめました3。
特徴 |
1型糖尿病 |
2型糖尿病 |
---|---|---|
発症年齢 |
小児期から若年期が多い |
40歳以上が多い |
症状 |
口渇、多飲、多尿、体重減少が急激に出現 |
自覚症状に乏しく、健康診断で発見されることが多い |
原因 |
自己免疫反応によるβ細胞の破壊 |
遺伝的要因と生活習慣の影響 |
治療法 |
一部を除き、基本的にはインスリン注射が必須 |
食事療法、運動療法、必要に応じて薬物療法 |
(文献3を参考に表を作成)
1型糖尿病
1型糖尿病は、発症の仕方によって3つに分類されます。
・劇症1型糖尿病:発症から1週間前後で発症
・急性発症1型糖尿病:数週間〜数カ月で発症
・緩徐進行1型糖尿病:数年かけてゆっくりと進行
いずれのタイプも、膵臓のβ細胞が破壊されることが原因です。インスリンの分泌が低下し、緩徐進行1型糖尿病の一部を除き、インスリン注射による治療が必要となります4。
1型糖尿病はウイルス感染がきっかけとなることもあります。生活習慣と直接的な関連は低く、予防することが難しいのも特徴のひとつです。治療が遅れると、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態に陥ります。
2型糖尿病
2型糖尿病は、遺伝的な要因と環境要因が組み合わさって発症します。肥満、運動不足、不規則な生活、ストレスなどの生活習慣の乱れが主な原因です。また、両親や兄弟に糖尿病の人がいる場合は、発症リスクが高くなります5。
インスリンの分泌低下とインスリン抵抗性の両方が原因となり、血糖値が上がるケースが多くあります。
2型糖尿病は初期には自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに糖尿病が進行してしまいます5。健康診断などで判明することが多く、早い段階で気づいて食習慣や運動習慣の改善を行えば、薬を服用することなく日常生活を過ごすことも可能です。
妊娠糖尿病や二次性糖尿病との違い
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見または発症した軽い糖代謝異常で、1型・2型糖尿病とは異なる疾患です。
妊娠中は生理的なインスリン抵抗性が増えるため、インスリンの働きが弱くなりやすく、血糖値が上昇しやすい状態となります。血糖をコントロールできれば合併症なく通常通り出産し、産後は血糖も正常化するケースがほとんどですが、コントロールが不十分の場合、合併症を起こすことがあります6。
二次性糖尿病は、膵疾患や内分泌疾患、インスリン作用に関係する遺伝子疾患などやステロイド薬などの副作用などにより発症する糖尿病で、感染症なども原因で発症することがあります。
1型糖尿病と2型糖尿病の治療サポート
糖尿病では、患者さんの年齢や生活環境によって適切な治療サポート方法が異なります。医療機関と連携しながら、個々の状況に合わせた治療計画を立てることが重要です。
定期的な血糖値の測定や合併症の検査など、継続的な医療管理が必要となります3。自治体で受けられる支援もあるため、周りのサポートを受けながら治療を進めていきましょう。
1型糖尿病:糖尿病患者向けの公的支援も利用
20歳未満は小児慢性特定疾患医療費助成制度や特別児童扶養手当などの対象となり、医療費の助成を受けられます7。小児で1型糖尿病の場合は、学校や保育園との連携が重要です。インスリン注射の管理や低血糖への対応など、医療的なケアが必要となります。
地域の自治体にご自身が受けられる支援があるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
2型糖尿病:家庭内で食事や運動面の生活改善
2型糖尿病の治療では、食事療法と運動療法が基本となります。できることから少しずつ、バランスの取れた食事や適度な運動習慣を続けていくことが大切です。もちろん食事や運動習慣の改善は2型糖尿病だけでなく、1型糖尿病や妊娠糖尿病の方に言えることでもあります。
必要に応じて、医師や看護師・管理栄養士などの医療機関のスタッフに相談してみましょう8。
糖尿病の1型と2型、妊娠糖尿病の予防方法
1型糖尿病は自己免疫疾患であり、現時点では予防法が確立されていません。一方、2型糖尿病は生活習慣の改善により、発症を予防できる可能性があります。糖尿病は放っておくと認知症のリスクもあるため、適正体重の維持・バランスの取れた食事・適度な運動・禁煙などで予防につなげましょう9。
妊娠糖尿病に関しては、過体重や肥満が大きなリスク要因のため、妊娠前からできるだけ適正体重を維持しましょう10。
まとめ
1型糖尿病と2型糖尿病は、血糖値が高くなる点では共通していますが、発症メカニズムや治療法が大きく異なります。
1型糖尿病は自己免疫疾患であり、インスリン治療が必須となることがほとんどですが、2型糖尿病は生活習慣の改善が治療の基本となり、インスリンを含む薬物療法でサポートします。
糖尿病の治療サポートには公的機関の利用も可能であるため、お住まいの自治体に問い合わせてみるのも良いでしょう。