MCI(軽度認知障害)を知る 認知症への進行を防ぐためにできること

MCIへの対処

早期に適切な対策をMCIに行うことで、認知症の発症を遅らせられる可能性があります。「MCIは早期発見が重要」と言われているのはこのためです。早い段階で発見し、対策をすることで、認知症の症状が現れないまま最期を迎えるケースもあります。
ここからはMCIの改善に有効と考えられている具体的な対策を紹介します。紹介する対策は、アルツハイマー病によるMCIだけでなくMCI全般を対象とするものです。

MCIの改善

検査の結果MCIと診断されたら、認知症の発症を遅らせるために、運動や食事の改善などを検討します。
食事の見直しや、運動を取り入れること、糖尿病やメタボリックシンドロームなど認知症の発症に関連するリスク因子の治療を行うことで、認知症の発症を遅らせるほか、認知機能の維持、改善が期待できます。

MCIの改善について、詳しくはこちら「軽度認知障害(MCI)改善のための対策とは?」

食事によるMCIの改善

食事や栄養は認知機能の低下と関連しています。WHOガイドラインでは、食事が認知症や認知症のリスクを高める病気(脳血管疾患や糖尿病など)に影響しているとし、健康的な食事は認知症を予防する可能性が高いとしています。
日本では厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクト(https://www.smartlife.mhlw.go.jp)において、健康な心身の維持・増進に必要とされる栄養バランスを基本とする食生活が、無理なく維持している状態を「健康な食事」とし、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を推奨しています。

運動によるMCIの改善

適切な運動は生活習慣病や脳卒中の予防にとても有効ですが、認知症への治療としてもその有効性が多く報告されています。
運動の種類には有酸素運動、筋力強化訓練、平衡感覚訓練などがあります。これらの複数種類を組み合わせたプログラムを週2回〜毎日、20〜75分程度行う内容が報告されています。運動機能を高めることで寝たきりや転倒のリスク低減も期待できます。

頭を使うこと(知的活動)によるMCIの改善

「考える」「記憶する」「判断する」などの知的機能をよく使うことで脳の働きを活性化し、認知機能を維持します。特別な道具や知識がなくても、普段の生活で実践できます。

知的活動の例

本を読む、語学などを勉強するなどMCI(軽度認知障害)への対処となる知的活動の例
  • 本や新聞を読む
  • 語学などを勉強する、習得する
  • 将棋・囲碁などのボードゲーム、
    カードゲーム、パズルなどを楽しむ
  • 絵を描く、編み物をする、工作するなど
  • 買い物の清算前にお金を計算する、
    食事の献立を考えるなど、
    生活の中で積極的に頭を使う

MCIの診断

まずは認知症かどうかの診断をするために問診と神経心理学的検査を実施し、患者やその家族が訴える症状が、年齢に伴う正常な変化なのか、MCIに該当するのかなどの診断を行います。
病歴や服薬歴の聴取を通じて、薬剤やアルコール起因の症状、うつ病、意識障害などとも鑑別することも重要です。これらの可能性を除外した後に、脳血管性認知症やアルツハイマー病などの神経変性疾患に起因する認知症の詳細な鑑別診断を行います。

認知症の診断基準を示す図。認知症の疑いがある場合、加齢によるもの、MCI(軽度認知障害)、その他の疾患を除外したあと、認知症の鑑別診断へ進む。

日本神経学会監修:認知症疾患診療ガイドライン2017, 医学書院, p37, 2017より作成

診断の流れについて、詳しくはこちら「病院に行く前に知っておきたいこと(検査・診断)」

MCIは早期に発見し、
原因に応じた治療や生活習慣の見直しが重要です。
まずは専門医に相談してみましょう。

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記事監修:
東京都健康長寿医療センター 副院長 /
脳神経内科部長 岩田 淳 先生
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