ケア
家族にMCI(軽度認知障害)の
人がいる場合の配慮
MCIは年齢相応の認知機能より低下している状態であるものの、日常の基本的な生活動作は自分でこなすことができます1)。そのため、MCIの人が家族にいるとしても、必ずしも日常的な介護やサポートが必要なわけではありません。しかし、MCIが進行して認知症になってしまうと、サポートがないと日常生活が送れなくなる可能性が高くなります。
MCI以外の病気でセルフケアが
必要な場合
MCI以外の病気で、注射を自分で打つなどセルフケアが必要な治療を受けている場合は、周囲の方からのサポートが必要な場合もあります。認知機能が低下したことによって、セルフケアが適切に行われず、予後の悪化や症状の重症化が起こる可能性があるためです。さりげなく注射の打ち方を確認したり、受診時に医師や看護師からの指示内容を改めて確認し合ったりするなど、本人のできることを見極めながら、状態に合わせたサポートを行ってください2)。
MCIにとって必要な習慣
他の病気がある場合だけでなく、日ごろの習慣としてカレンダーやノートに予定や出来事についてメモをとるようにしてみましょう。本人の自己効力感の向上や日常生活の基本的な動作を改善し、介護をする周囲の人々の負担も軽減することが示されています3)。もしMCIが進行して認知症になってしまった場合も、メモをとるという習慣が助けになることが期待できます1)。
将来のための心構え
MCIは、認知症へと進行するか、元の健康な状態に戻るか、将来どうなるか分からない状態です。その不確実ななかで、患者さんやご家族が日常の生活や食事の習慣を見直し、健康を取り戻すための一歩を踏み出すことも非常に重要です。
しかし、どうしても認知症へと進行してしまう場合もあります。そういった場合も想定し、定期的な通院で医師としっかりとコミュニケーションをとりながら、介護や支援のアドバイスを受けて認知症に備えることも重要です1)。
- 1)
- 日本神経学会監修:認知症疾患診療ガイドライン2017, 医学書院, p159, 2017
- 2)
- 永渕 美樹ら: 日本糖尿病教育・看護学会誌. 2019; 23(2): 175-181
- 3)
- Greenaway MC, et al: Int J Geriatr Psychiatry. 2013; 28(4): 402-409
認知症の方の介護について、詳しくはこちら「介護に当たっての基本的な考え方」
- 記事監修:
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東京都健康長寿医療センター 副院長 /
脳神経内科部長 岩田 淳 先生