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グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)とは?
更新日:2022/12/23

グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)とは?

グループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)とは?

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は認知症の高齢者を対象とする施設です。認知症ケアの知識と経験のあるスタッフと少人数の入居者が共同生活を送るため、なじみの関係が築きやすく、認知症の人が暮らしやすい環境であることが最大の特徴です。グループホームでの生活や入居の条件、費用、メリットなどについて解説します。

グループホームとは

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の人たちがユニットと呼ばれる5~9名のグループで共同生活を送るための施設です。専門スタッフのサポートを受けながらできる限り自立した生活をめざします。住み慣れた地域での暮らしを続けることを支援する介護保険制度上の「地域密着型サービス」にも位置づけられています。
グループホームの多くは家庭的かつ落ち着いた雰囲気で、大規模施設のようにスタッフや入居者が頻繁に入れ替わることがありません。環境の変化に戸惑いやすい認知症の人でも安心して日々を過ごせます。

グループホームでの生活

入居者一人ひとりに役割

グループホームでは食事(買い出し、調理、配膳、後片付け)や掃除、洗濯など、日常の家事はスタッフのサポートのもと入居者同士で分担するのが基本です。認知症のケアの一環であり、それぞれの能力をできる限り生かしながら自立した生活をめざします。誰かの役に立っているという実感を持つことが自信や達成感の獲得、意欲の向上などにつながり、安定した心身の状態を保ちます。

医療ケアサービス

特別養護老人ホームなどと異なり、グループホームには医師や看護師など医療職の配置は義務づけられていません。したがって、医療ケアは原則、行っていません。
ただし、近年は看護師を配置する施設も増えてきています。そのような施設であれば、看護師がバイタルチェック(体温、血圧、脈拍などの測定)や服薬管理、痰の吸引、胃ろうの管理、医療機関の通院介助などを行っています。なお、痰の吸引や胃ろうの管理は、所定の研修を修了していれば介護スタッフでも可能です。

レクリエーション、地域交流

ほとんどの施設で1日のタイムスケジュールの中にレクリエーションの時間を設けています。ただ楽しむだけでなく、認知症の症状緩和や進行抑制、運動不足の解消なども目的とし、脳トレやトランプ、歌、手芸、書道、ラジオ体操など内容はさまざまです。
施設の運営推進会議に地域住民が参加しているほか、行事に保育園児を招いたり、地元の小中学生に体験学習の機会を提供するなど、地域との交流もさかんに行っています。

グループホームに入居するには

グループホームに入居するには、以下の条件を満たす必要があります1、2

  • 医師に認知症の診断を受けている(診断書が必要)
  • 要支援2もしくは要介護1以上の認定を受けている
  • 施設と同一の市町村に住民票がある

グループホームは認知症の人のみを対象とする入居施設です。入居を申請する際は、認知症であることを証明する診断書を提出しなければなりません。
要支援2以上の認定を受けている必要もあります。認定を受けていない場合は、事前に市区町村役場やお近くの地域包括支援センターに相談してください。
「地域密着型サービス」のグループホームの利用は、施設と同一の市町村に住民票のある人のみに限定されます。特別養護老人ホームなどの高齢者施設は住民票を移して入所することが可能ですが、グループホームは住民票を移したあと一定の期間が経過しなければ入居が認められないこともあります。

グループホームの入居費用

入居費用は初期費用と月額費用に分かれます。金額は提供可能なサービスや住んでいる地域、要介護度などによって差があり、初期費用は0~数百万円、月額費用は10~30万円が相場です。

初期費用

初期費用とは入居時に必要な費用で、入居一時金や保証金のことをいいます。賃貸住宅でいうところの敷金に相当するもので、家賃滞納時の補填や退去時の原状回復費などに充てられます。多くの場合、退去時に返還されますが、償却期間や償却率が施設によって異なるため、返金を希望する場合は入居前に確認しておくとよいでしょう。

月額費用

毎月支払う費用には以下のようなものがあります。

  • 日常生活費
  • 介護サービス費
  • サービス加算

日常生活費は賃料や管理費、食費、水道光熱費、雑費(日用品、おむつ代ほか)など、日々の生活に必要な費用のことです。賃料は一都三県をはじめ都市部ほど高くなる傾向があります。雑費は日用品の持ち込みが可能な場合は、実費負担よりも安くなります。
介護サービス費は介護保険のサービスを受けるために必要な費用です。年齢や所得に合わせて1~3割が自己負担となります。施設や要介護度によって金額は変わってきますが、1割負担の目安は要支援2が2万2800円、要介護5が2万5740円となっています3
サービス加算は、夜間の緊急対応や看護師による医療ケアなど、より専門的かつ幅広いサービスが提供されている場合に、介護サービス費に上乗せして請求される費用です。サービスの内容に応じて1日に数円から数十円が追加されます。微々たる額ですが、入居期間が長くなると無視できない出費となるのであらかじめ確認しておくとよいでしょう。

グループホームのメリット

グループホームは認知症に特化した施設ということもあり、認知症の人が穏やかに、安心して生活できる多くのメリットがあります。

認知症の豊富な知識、経験を有するスタッフの存在

スタッフの多くが認知症ケアに関して豊富な知識、経験を有しています。認知症によって生じる症状はさまざまですが、専門のスタッフが24時間365日常駐するグループホームでは、いつなんどきでも一人一人に合わせた適切な対応が可能です。認知症による症状の緩和や進行抑制が期待できるレクリエーションなども行っています。

入居者同士のコミュニケーションがとりやすい

グループホームでは少人数のユニットで共同生活を送ります。スタッフや入居者の入れ替わりが少ないため、記憶力の低下があったとしても顔を覚えやすく、なじみの関係が築きやすい環境です。家庭的で安心できる雰囲気、入居者全員が認知症でお互いの悩みも共有、共感できるなど、コミュニケーションの障壁となるものがほとんどないのもグループホームの特徴といえます。

住み慣れた地域での暮らしを継続できる

同一の市町村に住民票があることがグループホームの入居条件の1つです。施設が立地するのはこれまでずっと住んでいた地域であり、入居前に行っていたお店に買い出しに出かけることもあるかもしれません。外出したときに顔見知りに会い、あいさつを交わすこともあるかもしれません。住む場所は変わっても住み慣れた地域での生活を継続することができます。

できることは自分で。自立した生活をめざす

可能な限り自立した生活をめざすグループホームでは、洗濯や調理、掃除などの日常の家事は、基本的に入居者同士で分担します。自分自身の身の回りのことも、できるだけ自分で行います。それぞれが能力を生かして手や身体を動かすことは、脳を刺激し、認知症の進行抑制につながる可能性があります。人の役に立てていると実感することは前向きな気持ちを保つことにつながります。

個室でプライバシーを保てる

共同生活といっても、一人一人に個室も用意されており、プライバシーはしっかり保たれます。使い慣れた家具や小物を持ち込んだり、愛着あるものを飾るなどすれば、住み慣れた自宅で過ごしているかのような安心感が得られます。

グループホームのデメリット

認知症の人にとって多数のメリットがあるグループホームですが、入居施設の選択肢が限られることや、状況次第では退去を求められる可能性があることなどあらかじめ確認しておきたい点もいくつかあります。

住民票と同じ市区町村の施設しか選択できない

住み慣れた地域での生活の継続を目的とするグループホームは、原則として住民票がある市区町村の施設でないと入居できません。ほかの高齢者施設よりも選択の幅が限られます。住民票を移しての入居も、市区町村によっては一定期間の居住実績がないと認められないこともあります。

空きがなく入居できない場合がある

グループホームは住民票がある市区町村の施設しか選択できないことに加え、施設の受け入れ人数にも限りがあります。空きがなく、すぐに入居できないこともめずらしくありません。

医療行為が必要だと入居できない場合がある

グループホームに医師や看護師の配置義務がないため、医療行為が必要な人を受け入れていない施設も少なくありません。また、入居後に継続的な医療ケアが必要になった場合や、要介護度が上がった場合など施設での安全な見守りが難しくなった際に退去を求められることもあります。

介護保険での福祉用具のレンタルができない

車椅子や歩行器などの福祉用具をレンタルしていた場合、入居後は介護保険での利用ができなくなります。貸し出し可能な福祉用具を用意している施設もありますが、そうでない施設に入居する場合、事前に購入したり、安くレンタルできる事業者を探したりする必要があります。

老人ホームとの違い

高齢者向けの施設には公的施設と民間施設があります。公的施設は特別養護老人ホームや介護老人保健施設など。民間施設は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など。グループホームは民間施設です。代表的な民間施設である有料老人ホームとグループホームの違いを以下にまとめました。

  有料老人ホーム グループホーム
対象 高齢者全般 認知症の人
特徴 施設によってさまざま
日常生活の支援、 機能訓練、 手厚い介護など
家庭的な環境で自立した生活
地域住民との交流もさかん
定員 数名~100名以上 最大27名 (3ユニット以下)
費用 初期:0~数億円
月額:10~40万円
初期: 0~数十万円
月額:15~20万円
入居条件 施設によってさまざま
60歳からの入居できる施設もある
自立~要介護5まで
認知症と診断されている
施設と同一市町村に住民票がある
要支援2以上
退去要件 病気の重症化、医療ケアが常時必要になった場合など 入院治療を要するなど適切なサービスの提供が難しくなった場合
介護体制 入居者3名に対してスタッフ1名
看護師1名以上
入居者3名に対してスタッフ1名
看護師の配置義務なし
医療体制 看護師による医療的ケアのほか、 緊急時の対応や訪問診療なども受けられる 医療ケアは提供されないのが一般的
服薬管理や通院介助など最低限の医療的サービスは受けられる
自立支援・リハビリ 食事や清掃など生活支援のサービスを提供
理学療法士や作業療法士、看護師などによるリハビリを実施
スタッフの手助けのもと、調理や掃除、買い物などの家事を入居者が分担し、自立した生活をめざす
レクリエーション 楽しみながら身体機能向上や脳の活性化が期待できるもの 手先を使ったり、脳を刺激したり、認知症の進行抑制が期待できるものが中心

平成十八年厚生労働省令第三十四号指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000100034(最終閲覧日2022年11月30日)、
厚生労働省「特定施設入居者生活介護の概要」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/dl/s1102-7c2.pdf(最終閲覧日2022年11月30日)、
https://www.cocofump.co.jp/articles/kaigo/202/ (最終閲覧日 2022年11月30日)を元に作成

グループホームの選び方

まずはお住まいの市区町村のグループホームに資料請求をしましょう。その中から、費用や介護、医療面の対応など、希望に合致する施設をいくつか見学することをおすすめします。
見学の際は、費用や施設の設備、医療ケアの対応、退去になる要件、愛着のある私物の持ち込みなど、聞きたいことをあらかじめメモをしておきましょう。
実際に見学をした際は、入居者やスタッフの表情、雰囲気を観察してください。入居者が穏やかな日々を送れているかどうかに、そうした部分に現れてくることがあるからです。笑顔が多ければよいということではなく、表情が自然かどうか、やり取りにぎこちなさがないかなどに着目するとよいでしょう。
玄関の様子も確認してください。履き慣れた靴や使い込まれた杖などが置かれていれば、定期的に外出するなど、適度に活動的な日々を送れていることがうかがえます。
入居後に「こんなはずではなかった」と悩まずにすむよう、可能であれば体験入居やショートステイをするとよいでしょう。

入居までの流れ

グループホームに入居するまでの流れは以下のとおりです。 入居待ちがなく、申し込み手続きが順調に進んだ場合も、 1~2カ月を要します。

①資料収集
インターネットなどで居住市区町村のグループホームを調べ、電話やメールで資料を請求します。
②施設見学
実際にグループホームを訪れ、入居者の生活の様子などを見学します。
③入居申し込み
入居申込書を提出します。受理されてから概ね1カ月は仮押さえの状態です。
④必要書類の準備
認知症の診断書、住民票、所得証明など必要書類を提出します。入手するのに時間がかかるものもあるため注意してください。
⑤面談
提出された書類などの情報をもとに施設スタッフと本人、家族が面談を行います。認知症の症状や体の状態、日々の生活状況などを確認します。
⑥入居判断
ここまでの情報を総合して、入居が可能かどうか検討します。
⑦契約
印鑑や健康保険証、介護保険証、口座振替情報などが必要です。契約締結後、入居予定日までに初期費用を指定口座に振り込みます
⑧利用開始

まとめ

グループホームは選択できる施設に限りがあり、入居待ちを要することもあるなど、有料老人ホームなどと比べると競争率が高い施設といえます。ですが、グループホーム並みの費用負担で、専門スタッフのサポートを受けながら認知症の人が自立した生活を送ることができる施設はそうそうありません。認知症の重症度や身体疾患の状態にもよりますが、認知症の人の施設利用を考える際は、グループホームについてもぜひ調べてみてください。

(参考文献)
1,指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)第五章認知症対応型共同生活介護
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000100034(最終閲覧日:2022年11月28日)
2,厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group18.html(最終閲覧日:2022年11月28日)
3,厚生労働省 介護報酬の算定構造 地域6
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000728262.pdf(最終閲覧日:2022年11月28日)