アルツハイマー病を知る

予防・日々の心がけ

脳の機能と加齢による認知機能の変化

脳は、私たちの体の活動をコントロールしている司令塔ですが、とくに記憶力、思考力、判断力などをつかさどる脳の機能は、日常生活の中で重要な役割を果たしています。

多彩な脳の動き:ものを作る、新しいことを考え出す、運動する、知覚する、話す、考える、判断する、聞く、見る
脳の機能とは:理解、判断、論理などの知的活動をつかさどり、充実した日常生活・社会生活を送るうえで、どの年代にも大切な機能。 外からの情報 → 判断・計算・理解・学習・思考・言語など知的機能を働かせる → 充実した日常・社会生活
年齢と認知機能の関係(年齢と認知機能の関係グラフ):青年期 より効率的に正確に仕事をこなし、多様な社会生活の中でスムーズに生活を営む能力、壮年期 仕事において中心的な立場から、さまざまな指示や決断を下す能力、老年期 加齢による物忘れや集中力不足によるうっかりを防ぐ能力
監修:東京都健康長寿医療センター 岩田 淳 先生
SchaieK.W, et al. NeuropsycholDev CognB Aging NeuropsycholCogn. 2004 June ;11(2-3): 304-324.を元に作成

脳の機能は全てのライフステージにおいて欠かせませんが、
働き盛りの世代から少しずつ衰えが始まっています

年齢とともに心身の機能は低下していきます。気づきにくいですが、脳も働き盛りの世代から衰えが進んでいきます。もの覚えがわるくなったり、人の名前が思い出せなくなったり。こうした「もの忘れ」は脳の自然な老化によるもので、突然起こるものではありません。
一方、何らかの原因で脳の神経細胞が減少すると、認知症と呼ばれる状態にいたることもあります。
できるだけ早いうちから、体と同じように脳の変化を意識することが重要です。
また、加齢だけでなく、運動不足・喫煙などの生活習慣が脳の変化につながるとも言われています。

認知症リスクの低減

認知症リスクを低減させるための12のポイントが、WHO(世界保険機構)から提示※1されています。

※1https://www.who.int/publications/i/item/9789241550543 (最終閲覧日: 2023年8月30日)

身体活動

65歳以上では、身体活動を10メッツ・時/週※1毎日40分(横になったまま、座った以外)が目安とされている

※1安静時を1メッツとした活動の強度で、「メッツ・時/週」は1週間あたりのメッツと時間をかけた値。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf(最終閲覧日: 2023年8月30日)

禁煙

禁煙は認知機能低下と認知症のリスク低減する可能性があるため、禁煙が強く勧められている

健康的な食事

食事が認知症や認知症のリスクを高める病気に影響していることから、健康的なバランスのとれた食事が勧められている

多量飲酒の減量・中断

多量のアルコール摂取が認知症の危険因子であることから、危険で有害な飲酒の減量または中断が勧められている

体重の管理

中年期の過体重と肥満、老年期の痩せは認知症の危険因子であるため、適正な体重を目指すことが大切

高血圧の管理

中年期の高血圧は認知症のリスクを高め、高血圧は脳心血管病の危険因子であるため、高血圧管理を行うべきである

糖尿病の管理

高齢期の糖尿病、糖尿病の合併症は認知症リスクを高めるため、糖尿病の管理を行うべきである

脂質異常症の管理

認知機能低下や認知症発症のリスク低減につながるため、中年期の脂質異常症の管理は行ってもよいとされている

うつ病への対応

うつ病は認知機能低下や認知症に関連しているため、うつ病のガイドラインに従った対応が勧められている

難聴の管理

難聴は認知症の危険因子であるため、コミュニケーション能力改善のために補聴器を提供すべきであるとされている

認知トレーニング

認知機能が正常、またはMCIの高齢者に対して、認知症リスク低減のために認知トレーニングを行ってもよいとされている

社会活動

社会活動は科学的証拠が十分ではないものの、一生を通じて社会と関われるように支援することは必要とされている

世界保険機関(WHO):認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン, 2019

記事監修:東京都健康長寿医療センター 副院長 / 脳神経内科部長 岩田 淳 先生