MCIから認知症への移行の予防
アルツハイマー病は、MCIの段階から介入することで、認知症への移行を遅らせることが期待できます。また、ご本人の理解力や判断力がより保たれている状態で将来の備えを行うこともできます。
早期介入の重要性
アルツハイマー病による
認知症への介入
- 薬物治療(対症療法)
- 認知症症状の進行抑制、BPSDの軽減
- 周囲の理解・適切な対応
- ご本人の社会・日常生活への対応
-
今後の生き方や
資産管理などの備え - 症状の進行に応じた今後の生活についての準備、適切な介護サービス
アルツハイマー病による
MCIへの介入
- リスク要因の特定と適切な介入による認知機能の維持・回復の可能性
- 例:認知症発症と関係のある生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)の対策⇒適切な運動・食生活・薬物治療など
- 将来への備え(ご本人の意思をより反映したものに)
- 例:今後の治療方針、将来の介護プラン、就労の継続、社会交流、余暇の過ごし方など
中島健二他編集: 認知症ハンドブック第2版.(医学書院), 2020, p.495-497を元に作成
早期診断はすべての認知症診療・ケアの出発点
アルツハイマー病に限らず、どのような病気が原因であっても、早期診断が適切な対処方法・ケアの選択の基礎になります。また、早期診断・早期治療によって入院や入所の時期を遅らせることもでき、医療費や介護費用の軽減につながります。
早期鑑別
- 原因となる病期固有の症状を把握でき、適切な対処方法、ケアプランを選択できる
本人の意思の尊重
- 本人の意思や判断をくみ取ることが困難になる前に、意思を確認することができる
認知症の進行の遅延
- 早期に治療を始めれば、長い期間、家族や地域の中で暮らすことができる
- また、本人の不安や混乱の軽減につながることもある
BPSDの出現の軽減
- 精神障害や行動障害(BPSD)に対する適切な対応を把握して準備することができ、激しいBPSDの出現を抑えることができる
- その結果、入院や入所の時期を遅らせることができる
家族・介護者のQOL(生活の質)の維持
- 正しく疾患を理解することができ、予測できる症状に対するケアに要するエネルギーが減る
- きちんとした医療が節目節目にかかわることができ、生活の質が豊かになる
池田 学:認知症-専門医が語る診断・治療・ケア(中公新書), 2010, p.32-34を元に作成
MCIからの回復(リバート)の可能性
MCIを引き起こす原因はさまざまです。原因によっては現状が保たれたり、回復したりすることもあるため、MCIの方が必ず認知症になるわけではありません。これまでさまざまな研究が行われ、1年で16~41%の人が健康な状態に戻ったとの報告もあります4。
MCIのうちに発見し、早期に対策を行うことで、改善がみられたり、発症を遅らせられる可能性があります。
4日本神経学会監修:認知症疾患診療ガイドライン2017(医学書院)2017, p.147
MCIの原因
MCIの原因として最も多いと考えられているのは、「アルツハイマー病によるMCI」です5。一方で、MCIは認知症を引き起こす脳の病気だけでなく、体や心の問題でも起きることがあります。
5厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野認知症対策総合研究
「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」平成23年度~24年度総合研究報告書